「母は車を止めて、大号泣しました」“プロレスラーになりたい”田中きずなが家族に告げた日…ケガで生死をさまよい引退した府川唯未と娘の約束
「お母さんは高校を中退してるから、あなたには…」
――事故っちゃうよ! 田中 (車を)止めて、大号泣でした。「いつか言われるってわかってた」って言われて。そこでした約束として、「本気なら応援してあげたいけど、高校生活も楽しんでほしい」って。「お母さんは高校を中退してプロレスラーになってるから、あなたには高校生活を楽しんでほしい。ほんとは大学にも行ってほしかった。(自分が)できなかったことをやってほしかった」みたいな気持ちがあったみたいで、とにかく「高校だけは卒業してほしい」って。「部活も、プロレスと関係ない、自分がやりたいことをやってほしい」って言われて。私的には空手か柔道って思ってたんですけど、チアダンス部に入りました。お母さんと約束した、卒業すること、部活と両立させることを守りながら、高校2年生でwaveの練習生になりました。 ――学業と部活とプロレスを並行させたんですか。 田中 そうですね。部活もけっこう厳しくて、月曜日から金曜日は部活があって、土日はプロレスの練習。部活と練習の空き時間にバイトして、(都内の練習場に出るまでの)交通費を稼ぐという生活をしてました。親に認めてもらうためにも、交通費は自分で出そうって思って。実家(神奈川県逗子市)から東京は遠いので、交通費だけでだいぶかかっちゃってたので。だから、友達と遊びに出かけるとかは、高校2年生からほぼしてないです。高校最後の体育祭も、練習を優先して休みましたし。
「やっていいよ」って言わせるのは無理。だからこそ…
――その猛進ぶりから、いかに本気だったかは伝わりました。でも、お母さんはケガで生死をさまよった。そのお母さんが泣いてまで反対したプロレスラーになることに、怖さはなかったですか。 田中 ケガの重大さはもうしっかりわかってたつもりなんですけど、それでもプロレスに対する怖さっていうのはまったくなくて。「私にはこれしかない!」ってずっと思ってましたけど、デビューしてから怖くなりましたね。いろんな思いでプロレス入りを認めてもらってるのがわかってるので、ケガしない体づくりをしなきゃとか、心配をかけてしまう要素を少しでも減らせるようにっていうのは思ってますね。 ――お母さんはどのタイミングであきらめ、認めたんだと思いますか。 田中 デビュー(wave23年4・2新宿FACE大会)直前までは、やってほしくないって気持ちがずっとあったと思いますね。「いつ辞めてもいいんだよ」とか、何回も言われてましたから。お母さんに、「もう認めた。やっていいよ」って言わせるのは無理だなって、私は思ったんですよ。きっと、やらないでほしいって気持ちのほうが強すぎると思うので。だから、少しずつでもお母さんが認めてくれるようになるために、さっき言った約束、高校を出ること、部活をやることは絶対だなと。プロレスの練習を家でもするとか、そういうところを見せて、認めてもらうしかないなって。言われてたんですよ、「あなたがプロレスを大好きなのは、もうわかってる」って。「それはわかってるけど……」って、いつも言われてたので。んー、いつからですかね。認めてもらえたのって。 ――それは、わからない? 田中 えー。認めてくれてる……んですかね(笑)。《インタビュー第3回に続く》 (撮影=杉山拓也)
(「格闘技PRESS」伊藤雅奈子 = 文)
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