奈良美智が青春を過ごしたロック喫茶「JAIL HOUSE 33 1/3」が〈弘前れんが倉庫美術館〉へ。
ロック喫茶「JAIL HOUSE 33 1/3」はこの秋〈弘前れんが倉庫美術館〉にて開幕した『どうやってこの世界に生まれてきたの?』展の中で「第4章 仲間と家」として展示されている。この展示室では奈良の教え子でもあり創作仲間でもある杉戸洋との共作が並び、初公開作品がさりげなく発表されている。 「僕も杉戸もそうなんだけど、展覧会があるからとか締め切りがあるから、といって描くわけじゃないんだよね。たまたま2人で三ヶ月ほどウィーンで一緒に制作したことがあって、遊びで描いた作品。特に発表する機会がなくて取っておいたんだけど今回展示してみました。全部が真面目でも疲れちゃうだろうし、ちょっと緩い、遊び心がある作品もあってもいいかなと」(奈良)
『どうやってこの世界に生まれてきたの?』展は、タグチアートコレクションを中心に世界各地のアーティストたちの作品で構成。ミカ・ロッテンバーグ、トゥアン・アンドリュー・グエン、奈良美智、杉戸洋、片山真理、塩田千春らが参加し、絵画や写真、映像など多彩な作品を通じて、生きることと幸せについて考える展覧会だ。
本展は、内と外、自己と他者、過去と未来の領域を曖昧にしながら、互いに響き合っている。たとえば、〈弘前れんが倉庫美術館〉の二階のホワイエスペースの窓には、りんごの蒸留酒であるアップルブランデーがガラスパネルに閉じ込められた和田礼治郎の作品があり、窓の外の現在の風景と、過去この場所にあった風景が重なり合いながら内側に取り込まれている。 また、コソボ出身のアーティスト、ペトリット・ハリライの作品は、美術館の内と外を自由に行き来する見えない鳥の気配を感じ、アートの世界と日常の境界線を取り払ってくれる。
「恋をすること」や「想像力を働かせること」、はたまた「別の場所へ旅すること」や「多様性を知ること」。テーマや表現方法こそ違えど、新しい世界へ通じる「扉」を作家たちがそれぞれのアプローチで提示し、その扉の先にどんな世界が広がっているかを想起させてくれる。