なぜエンゼルスは大谷翔平との調停決着を回避して2年総額8億9000万まで譲歩したのか?
エンゼルスの大谷翔平(26)が2年850万ドル(約8億9000万円)で契約合意した。1年目が300万ドル(約3億1500万円)、2年目が550万ドル(約5億7700万円)となる契約だ。3年のシーズンを終えた大谷は、今オフに年俸調停権を得ていたが、19日に予定されていた公聴会を前に調停は回避された。大谷サイドは1年330万ドル(約3億4000万円)を希望、球団サイドの提示は250万ドル(約2億6000万円)で、両者には80万ドル(約8000万円)の開きがあったとされるため球団側の大幅な譲歩である。しかも、エンゼルスでは複数年契約を結んでいる選手は、マイク・トラウト、アンソニー・レンドン、ジャスティン・アップトンの3人だけ。大谷がフリーエージェントになるのは2023年オフで、2年後にもう一度、年俸調停権を得るが、まさに特別待遇を与えたとも言える。 合意後、メディアの取材に応じたペリー・ミナシアンGMは「リスクと見返りの両方がある」とした上で「とても難しかった。だが、お互いに相手がどこを評価しているかの考えを理解し、尽力して合意に達することができた。彼は周りとは違うタイプの選手。多くの選手が彼がフィールド上で行っていること(二刀流)をできない。我々にとって2年契約で合意できたことは理にかなっていた」と説明した。 大谷は2017年オフに日ハムからポスティングによってエンゼルスに移籍したが、メジャーの労使協定によりプロ経歴5年で23歳だった大谷はインターナショナル・ボーナス・プールの契約対象選手となったためマイナー契約しか結ぶことができず、1年目の年俸はメジャー契約に切り替わってもメジャー最低年俸となる54万5000ドル(約5700万円)に抑えられていた。年俸調停権を得る3年目までは大型契約を勝ち取ることができず、2年目は65万ドル(約6800万円)、3年目の昨年は70万ドル(約7300万円)だった。ただ昨年は新型コロナの影響でレギュラーシーズンは60試合しか開催できなかったため、実質は26万ドル(約2700万円)しか手にできていない。 年俸調停権を得た今オフには大型契約が期待されていたが、2018年にトミー・ジョン手術を行い、昨季に投手として復帰したが、先発2試合目に球速が140キロ台に落ちるなどの異常が出た。検査の結果、「右肘の回内屈筋群の炎症」と診断されたが、靭帯には問題はなく懸念されていた再手術は回避された。打者専念のシーズンとなり、打率.190、7本塁打、24打点と不本意な成績に終わっている。 エンゼルス側とすれば、二刀流復活の可能性が、複数年契約と、その値段を決める上での重要なファクターだった。