マイコプラズマ肺炎 8年ぶり流行 特徴は長引くせき…初期症状は発熱、だるさ、たんを伴わない空ぜき
細菌が原因で起きるマイコプラズマ肺炎の感染が8年ぶりに拡大しています。コロナ禍では患者数が激減していましたが、海外での流行や社会経済活動の正常化に伴い、国内でも増加しました。例年、秋から冬にかけて患者が増える傾向にあり、注意する必要があります。(佐々木栄) 【図解】中高年女性に多い「肺マック症」 感染の仕組み
14歳以下6~8割
この病気は、細菌「肺炎マイコプラズマ」に感染して発症します。細菌を含むせきやくしゃみのしぶき(飛沫)の吸い込みや接触でかかります。 潜伏期間が2~3週間あるため、知らぬ間に周囲に感染を広げる恐れがあります。14歳以下が患者の6~8割を占めますが、近年、大人の割合が増えてきました。 感染症法上の分類は、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」です。病床数300以上で内科と小児科がある約500か所の基幹定点医療機関が毎週、患者数を報告しています。
国内では、五輪のある年に流行がみられる傾向があり、「オリンピック病」と呼ばれていました。実際、2012年と16年は年間の患者報告数が2万人前後になりました。 しかし、4年ぶりに流行するとみられていた20年はあまり感染が広がらず、定点医療機関の年間報告数は3534人でした。この年は新型コロナウイルスが感染拡大したため、手洗いやマスク着用を行う人が増え、国内外の人の行き来が抑制されたことが影響したとみられます。21~23年も同様の傾向が続きました。 しかし、今年6月頃から、患者報告数は急増しました。欧州や中国などで昨年に感染が拡大したことや、8年間流行がなく、免疫を持っていない人が増えたことが原因と考えられています。
マスク、手洗い大切
初期症状は、発熱やだるさ、たんを伴わない空ぜき、頭痛などです。特徴は長引くせきで、熱が下がった後、3~4週間続くこともあります。 多くの人は1週間ほどで治ります。肺炎になっても症状が軽いこともあり、「歩ける肺炎」と呼ばれます。大阪公立大教授の掛屋弘さん(臨床感染制御学)は「重症化を防ぎ、感染を広げないためには、長引くせきを甘く見ず、早期に医療機関に行くことが重要です」と指摘します。インフルエンザや新型コロナなどと症状が似ており、検査キットなどで早期に診断を確定させることが大切です。 肺炎が重症化したケースでは、髄膜炎や皮膚症状、肝炎など、ほかの臓器に深刻な合併症が出ることもあります。 治療には抗菌薬を使います。最初に使用を考えるのが「マクロライド系」と呼ばれるタイプです。子どもにも使用できます。 ただ、投薬から48時間を過ぎても症状が改善しない場合は、耐性菌に感染している可能性があり、別のタイプの抗菌薬に変更することになります。 マクロライド系への耐性菌は00年以降に出現し、11~12年の流行をもたらしたとされています。当時、8割を耐性菌が占めていたとの報告もあります。 マイコプラズマ肺炎の予防のためのワクチンはありません。マスクや手洗いによる基本的な感染対策が大切です。