【甲子園の記憶】元仙台育英の準優勝メンバー「あづま寿司」店主が語る35年前の夏 エース・大越基、拾い集めた土、帝京との死闘...
そしてなぜか、「ストレートを投げておけば大丈夫」のはずの先頭打者に変化球を投じ、ポテンヒットを許してしまう。これを皮切りに2点を奪われる。延長での2点はあまりにも大きい。 その裏、仙台育英も二死から藤原伸行が二塁打を放ち粘る。次の打順は村上さん......のはずが、竹田監督は甲子園ではまだ打席に立っていない吉田尚一を代打に起用した。だが、その吉田は三振。帝京が初優勝を果たすことになる。 聞きたかったのは、その場面だ。本当は、村上さんは自分が打ちたかったのでは? 「いや、吉田というのは試合には出ていませんけど、バッティングはピカイチだったんです。あの代打は納得ですね」 後日談。長じて村上さんは、この場面について竹田氏に話したことがあるそうだ。 「あの大会、自分は毎試合ヒットを打っていたんですよ。帝京戦でも1本放ちました」 これに対して竹田氏は「そうか? 失敗だったかな」と笑ったとか。あそこで、村上さんが打席に立っていたら......もしかすると35年前の夏に、優勝旗は白河の関を越えていたかもしれない。 仙台に出かけたら、ぜひ一度『あづま寿司』に足を運んでみては? 野球好きには絶対、オススメです。 「高校野球2024年夏の甲子園」特設ページはこちら>>
楊 順行●文 text by Yo Nobuyuki