「8連覇を逃したら引退する」。“絶対王者”名古屋オーシャンズの守護神・篠田龍馬が話す、停滞の要因と背水の覚悟|フットサル
取り戻し出した、“絶対王者”としての姿
約2カ月半の中断期間が明け、最初の相手は首位・バルドラール浦安。名古屋は最後までゴールを奪えなかったものの、GK・田淵広史を中心に決死の守りを見せて31本の被シュートをブロック。“史上最高のスコアレスドロー”とも言えるゲームを演じた。 翌週、勝ち点2差で名古屋を上回っていた立川アスレティックFCに2点差を追いつかれる形で引き分けとなったが、この試合を最後に、彼らは5連勝を収めて“絶対王者”としての本来の姿を見せ始める。 勝利した5試合のうち、4試合で名古屋は先制点を喫している。 当然ながら先に1点を決められれば士気は下がり、反対に相手は勢いづく。だが名古屋は“いつもの力強さ”でこの逆境を跳ね除けていく。 象徴的だったのは、第14節・湘南ベルマーレ戦。名古屋は第1ピリオド終了時点で0-3という絶望的状況を迎えていた。 そんな暗雲を吹き飛ばしたのは金澤空だった。第2ピリオド開始から17秒後、前からのプレスでボールを奪うと、そのまま相手GKの肩口を抜くシュートを突き刺してみせた。 34分には金澤が清水和也のシュート性のパスを左ポスト付近で合わせ点差は1に。そして、37分と38分にパワープレーから清水が2ゴールを決めて一気に逆転し、残り56秒にアンドレシートがダメ押しの1点を決めて5-3と大逆転勝利を収めてみせた。 「このチームは勝利が第一。いまは目指しているフットサルを体現する時なのか、割り切ってそうじゃないのかを局面局面で判断しなければいけない。無理につなごうとして、結果が出ないというのが中断前でした」と篠田はシーズン後半戦での変化について語る。 首位を独走していたこれまでのシーズンでも、セットプレーやパワープレーといった強引さでも難しい局面を打開し、勝ち続けてきた。湘南戦で見せたゴールの奪い方は、クワトロでの綺麗な崩しではなく、強さを誇示していた時のそれだった。 結果が伴い、自信もついてきたことで内容面での向上も見られるようになってきた。 第15節・町田戦では、激しく前からプレスに来る相手をいなす見事な崩しを披露。12分には、底辺の吉川智貴から金澤空が自陣左サイドで受けると、中央の水谷颯真との見事なワンツーで裏へ抜け出し、決定機を演出した。そして、直後の13分に左サイドの水谷が中央の甲斐稜人と似たような崩しから、ゴールを決めてみせた。 前節のヴォスクオーレ仙台戦は、吉川智貴、鬼塚祥慶を累積警告による出場停止で欠きながらも2-1で勝利し、これで5連勝。2位へと浮上し、勝ち点7差で首位・浦安の背中を追いかける。 ファイナルシーズンを含めれば、浦安との対戦は2回も残っている。そこで勝ち点6を奪えれば、優勝に大きく近づける。他力も必要になるが、結果も内容もついてきたいま、浦安戦以外も落とすことなくプレッシャーを与え続けていれば、いずれは逆転で首位に立つことも十分に考えられる。 戦力的には、フルメンバーがそろわず苦しい部分も少なからずあるはずだ。しかし完全プロクラブという恵まれた環境があり、タイトルを取り続けてきた王者としてのプライドが彼らにはある。 勝利は至上命題だ。 「リーグタイトルを落としてしまったり、なにか間違ってしまった時に責任を負うのは監督や年齢が上の選手。僕はオーシャンズ以外でプレーするつもりはない」 昨シーズン、苦しんでいた際に篠田はそんな言葉を残していたが、その思いは今シーズンも変わらない。 「(リーグタイトルを逃したら引退する)覚悟は決まっている。ただ、必ず優勝しますよ」とキャリアのすべてを懸け、退路を断って名古屋に尽くす。