エムポックス・2回目の緊急事態宣言はどれだけ深刻か
◇2022年流行との違い
このように今回のエムポックスの流行は、ウイルスの種類が1型である点が、22年との大きな違いです。伝播(でんぱ)様式も、22年は性行為感染などでMSMを中心に拡大しましたが、今回は性行為感染だけでなく家族内感染も多く、このために子どもの患者が増えています。 エムポックスの患者は、皮膚の病変部分にウイルスが存在するため、そこに接触すると感染が起こります。また、患者が使用した寝具にウイルスが付着し、それに接触して感染することもあります。さらに、患者からの飛沫で感染することもあるようです。今回の1型ウイルスの流行ではこうした伝播が多いことから、性行為だけでなく家族内でも起きているのです。 また、1型ウイルスは重症化しやすいことが知られており、今回の流行拡大でも致死率が2型の流行に比べて、かなり高くなっています。これはウイルスの病原性が強いこともありますが、子どもの患者が多いことも影響しているようです。さらに、流行の中心であるコンゴ民主共和国では、子どもの栄養状態が悪いことや、HIVの感染率が高いことも、重症者が多いことに関与していると考えられます。
◇世界流行に至るリスク
これから先、1型ウイルスによるエムポックスはどこまで拡大するでしょうか。 まず、アフリカ域内ではコンゴ民主共和国を中心に、さらに広がる可能性が高いと考えます。これを抑えるためには、流行地域の住民へのワクチン接種を拡大させる必要があります。エムポックスには天然痘に用いたワクチンが有効であり、その接種により22年からの2型ウイルスの拡大が抑えられました。このワクチンは1型ウイルスにも同様の効果が期待できます。 では、アフリカ域外への拡大はどこまで進むでしょうか。アフリカで感染した欧米などの渡航者が、帰国後に発症するケースは今後、散発するものと考えます。しかし、欧米のMSMなどのハイリスクグループは、2型ウイルスの対策ですでにワクチン接種を受けている人が多く、そこで広がる可能性は低いと考えます。つまり、アフリカ域外への流行拡大のリスクはあまり高くないと予想されます。