USスチール株が20%以上急落、日本製鉄による「買収阻止」報道で
バイデン大統領は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画について、中止命令を出す方向だと複数のメディアが報じた。これを受け、123年の歴史を持つUSスチールの株価は9月4日の取引で前日比20%以上急落し、年初来の最安値に沈んだ。 バイデン大統領は、国家の安全保障に対する懸念からこの取引を阻止しようとしていると英紙フィナンシャル・タイムズが報じた。 USスチールの株価は、米東部時間午後2時の時点で22%以上下落して約27.75ドルをつけ、昨年8月以来の安値に沈んだ。一方、日本製鉄の株価は、4日の東京証券取引所で約3.5%下落し、3163円をつけている。 USスチールのデビッド・ブリットCEOは、この買収が成立しなければ、同社がピッツバーグに本社を置き続けられるかどうかについて深刻な疑問が生じ、「組合員数千人が職を失うリスクにさらされる」と語ったとワシントン・ポスト紙は報じた。 この買収を巡っては、安全保障上の懸念がないかを対米外国投資委員会(CFIUS)が審査しているが、USスチール広報担当者のアンドリュー・フルトンは、「我々は、CFIUSからのいかなる最新情報や大統領令も受け取っていない」とフォーブスに語った。 「当社は、日本が米国の最も強固な同盟国の一つであるが故に、この取引に安全保障上の懸念はないと確信している。当社は、法の下で可能な限りの選択肢を追求しようとしており、この取引がペンシルベニア州や米国の製鉄業、そしてすべての利害関係者にとって最良の未来になることを期待している」と彼は続けた。 USスチールの株価は、今年の年初に47.96ドルをつけていたが、4日の急落を経て、年初来で約38%下落している。 USスチールの競合であるクリーブランド・クリフスは昨年、USスチールに買収提案を行ったが、この取引が成立した場合、米国の鉄鉱石生産の95%が1社の下に集中することになり、独占禁止法上の問題に直面することへの懸念から頓挫したとロイターは報じていた。 バイデン大統領は、3月にUSスチールが「国内で所有・運営される米国の鉄鋼企業であり続けるべきだ」と述べて、日本製鉄による買収に反対の意向を示していた。大統領のこの発言は、北米で約120万人の組合員がいる全米鉄鋼労働組合(USW)が、買収による雇用の喪失や工場の閉鎖を懸念していることの影響を受けている。 一方、USスチールのブリットCEOは、日本製鉄が30億ドル(約4300億円)の投資を行えば、同社は古くなった工場を稼働させ続け、労働者の仕事を守ることが可能だとウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事で述べている。 この買収には、カマラ・ハリス副大統領やドナルド・トランプ前大統領も反対しており、両者ともUSスチールの米国内での所有と運営を支持している。 トランプは、大統領に選出された場合に即座にこの買収を阻止すると述べている。トランプの副大統領候補であるJ.D.ヴァンスも、この取引に対する規制当局の安全保障上の懸念を支持し、「アメリカにおける防衛産業の基盤の重要な部分が外国に売却されようとしている」と昨年、この買収計画が発表された際に述べていた。
Antonio Pequeño IV