三井住友信託銀、インサイダー取引の本人申告から2日で管理職を懲戒解雇
三井住友信託銀行は1日、管理職だった元社員がインサイダー取引をした疑いがあると発表した。大山一也社長は同日夜、東京都内で記者会見し、「極めて深刻な事態だと受け止めている。ご迷惑をおかけして申し訳ない」と陳謝した。今後、外部の有識者らでつくる調査委員会を設け、事実関係や原因の究明を進める。
発表などによると、元社員は業務を通じて入手した情報を基にして、他社の株式の売買を複数回行った疑いがある。10月30日に本人から会社側に申告があり、発覚した。銀行側は翌31日、売買記録に関わる証拠資料を確認できたなどとして、11月1日付で懲戒解雇した。
インサイダー取引の時期や件数、金額、本人が申告した動機といった事案の詳細については、明らかにしなかった。大山氏は「関係当局の捜査や調査に影響する上、本人が特定される恐れもある」などと説明した。
大山氏は「現時点で当社が把握している事実から判断すれば組織的関与はないだろうと思っているが、今後、他の関与者がいないかも含めて徹底して調べる」とも述べた。経営責任については「当局の捜査及び調査を踏まえながら、当社の調査委員会でも事実関係を把握し、経営責任を明確化する」とした。
同銀は2012年にも、公募増資を巡るインサイダー取引があったとして、金融庁から課徴金納付命令を受けている。その後の社員教育が十分だったかなども問われそうだ。
足元では、金融関係者のインサイダー取引疑惑が相次いで発覚している。金融庁では10月、出向中の裁判官が職務を通じて知った株式公開買い付け(TOB)など企業情報を基に株取引を行った疑いがあるとして、証券取引等監視委員会から金融商品取引法違反(インサイダー取引)容疑で強制調査を受けていたことが明らかになった。東京証券取引所でも10月、企業の情報開示に関わる部署に所属する社員が、業務を通じて得たTOBに関する未公表情報を基に、親族に株取引を勧めた疑いがあるとして、監視委から金融商品取引法違反容疑で強制調査を受けたことがわかった。