領域を超え、食の未来を考える。世界のイノベーター100名が登壇「SKS JAPAN 2024」開催レポート
三菱UFJ銀行が挑む、フードエコシステムの構築
SKS JAPAN2024のプラチナスポンサーである三菱UFJ銀行は、金融機関の立場から食の社会課題解決に取り組んでいる。セッション「MUFGが描く2050年のFuture Food Vision ~食と新世界へ」では、同社の小杉裕司氏より、未来に向けたビジョンと現状の課題が示された。 小杉氏「食は、環境、経済、栄養、健康など、さまざまな課題につながる分野。また、日本の食品企業に目を向けると、欧米と比べて売上や時価総額が小規模であり、グローバルな発言力を高めるためには、業界再編なども必要です。一方、市場規模などを見ると、食関連産業は大きな可能性を秘めています。日本のメガバンクとして、社会課題に対して真剣に取り組む価値があると考え、私たちは国内初のフードエコシステムの構築に挑んでいます」 三菱UFJ銀行が目指す領域は、二つに大別される。一つは「社会課題と食」で、38%にとどまる日本の食料自給率、肥料の輸入依存、就農人口の高齢化など、レジリエンスに関わる課題の解決だ。もう一つは、「多様な価値と食」。食べることで個人のウェルビーイングを実現する方向性である。 小杉氏「2050年には、これらを両立する世界を実現したいと考えています。そうした中で当社ができるのは、スタートアップを取り巻くステークホルダーをつなげることです。スタートアップ、中堅・中小企業、大企業、IPO(新規公開株式)、トレードセール(M&A)、富裕層向けのウェルスマネジメント領域など、金融機関である当社はさまざまな取引を行なっています。これらを有機的につなげることで、有望なスタートアップを発掘できると考えています」 具体的な取り組みも進んでいる。農業法人のイオンアグリ創造とは、金融と農業を掛け合わせた事業共創を目指すためMOUを締結し、持続可能な農業パッケージの開発を推進。三井不動産とは、街の新しい実証基盤・共創拠点を通じ、食の産業創造を推進する協業がスタートした。 小杉氏「UnlocXの田中さん、Beyond Next Venturesの有馬暁澄さんなど、さまざまなプレイヤーとコンソーシアム『Next Prime Food』を立ち上げ、ユニコーン企業の創出にも取り組んでいきます。また国際的ルールメイクに向けては、アカデミアや政府、行政機関、大企業と連携し、日本版栄養プロファイリングモデルの発信などを進める予定です」 では三菱UFJ銀行は、どのような形で食の課題解決をビジネス化するのだろうか。 小杉氏「現在、金融機関は金利上昇により好決算となっています。今後5年は口座数を増やすなど、今ある基盤を活かした戦略が求められるでしょう。一方、10年単位で考えると、非連続的な仕組みを今から育てていく必要があります。ここで重要なのが、社会課題解決を起点にしたビジネスであり、食という領域です。目先の利益を重視すると解決できる課題も小さくなってしまうので、長期的な視野で向き合っていきます」
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