「たかが風邪?ではない」生後12日で長期入院も「RSウイルス」の本当の怖さ 免疫力がない乳幼児には「ワクチン」と「予防薬」で対応を
“たかが風邪”と、あまり注目されていないウイルス感染症のなかに、乳幼児には重症化リスクが高いものがあることをご存じだろうか。そのウイルスは「RSウイルス」。耳にしたことのある人もいるだろう。 【図で紹介】乳幼児は要注意「RSウイルス感染症」の潜伏期間と症状、感染力 実は、このRSウイルス感染症から乳幼児を守る2つの方法――「ワクチン」と「予防薬」が新たに日本で使えるようになった。どんなものなのか見ていこう。 ■生後12日でRSウイルスに感染 小児科医の峯眞人さん(医療法人自然堂峯小児科)は今年4月、生後12日でRSウイルスに感染し、重症化した新生児を診たという。病気は自身のきょうだいからうつったようだ。
最初にかかったのは、幼稚園に通うお兄ちゃん(3歳11カ月)で、発熱と咳症状が続いた。その3日後にお姉ちゃん(1歳9カ月)にも同じ症状が出た。 このとき、2人の受診に付き添った祖母の話から、家にもう1人子どもがいることがわかった。生後12日のAちゃんだ。ついこの間、産科を退院したばかりだった。 【図で紹介】乳幼児は要注意「RSウイルス感染症」の潜伏期間と症状、感染力 「年齢の大きいお子さんにとっては何でもないRSウイルスでも、新生児が感染すると重症化しやすい。だから、なるべくお兄ちゃんとお姉ちゃんに接触しないよう気を付け、何らかの症状があればすぐに受診してほしいと伝えたのですが……」(峯さん)
だが、峯さんが心配したように、AちゃんはすでにRSウイルスに感染していた。 それらしき症状が表れたのは、きょうだいが受診した2日後のこと。最初は鼻詰まりと軽度の咳。そこから症状が急激に悪化し、激しい咳が出て、母乳を吐くようになった。峯さんが受診したAちゃんの血液中の酸素濃度を調べると、呼吸困難のレベルまで低下していた。 Aちゃんはすぐに小児専門病院に救急搬送されたが、そのときには血液中の酸素が不足する低酸素血症に加えて、口から哺乳することもできない状態に陥っていた。