「たかが風邪?ではない」生後12日で長期入院も「RSウイルス」の本当の怖さ 免疫力がない乳幼児には「ワクチン」と「予防薬」で対応を
RSウイルス感染症にはインフルエンザのタミフルのような抗ウイルス薬はない。そのため、鼻に入れた管から酸素を送ったり、栄養を入れたりして対応するしかなかった。 「AちゃんはHCU(High Care Unit:高度治療室)で集中的に治療を受け、幸いにも回復しましたが、無気肺という肺に空気が入らない状態を合併し、退院できたのは1カ月後でした。そのうえ、退院後も自力で育児用ミルクを飲めなかったため、栄養を管から入れる状況が1カ月ほど続きました。ご家族の心労も手間も大変だったと思います」(峯さん)
■RSウイルス感染症とはこんな病気 RSウイルス感染症は、生後1歳までに半数以上の子どもが、2歳までにほぼすべての人が感染することで発症する、ありふれた病気だ。 症状の経過については、以下の図がわかりやすい。 ウイルスに感染してから4~5日間の潜伏期間を経て、初期症状として咳、鼻水、熱(38~39℃くらい)などが2~3日続く。そのあと、強い咳や喘鳴(ゼーゼーする)、顔色や唇の色が悪くなるといった症状が4~5日表れてから、徐々に回復していく(※外部配信先では閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
ウイルスには何度も感染するが、大人や小学生以上の子どもの場合は少しずつ免疫をつけていくため、かかっても多くが軽症ですみ、ほとんどは自然に治ってしまう。 症状があって病院で診てもらったとしても、ウイルスを特定する抗原検査は基礎疾患のない1歳以上では健康保険が使えず自費になるため、また特定する意義が少ないため、“単なる風邪”として扱われて終わりだ。 一方で、乳幼児や、持病のあるハイリスク児(下の表を参照)にとってRSウイルス感染症は、重症化しやすい怖い病気だ。重症化すると肺炎を起こしたり、急性脳症といった重い合併症をもたらしたりする。ぜんそくなどの後遺症が残ることもある。