「たかが風邪?ではない」生後12日で長期入院も「RSウイルス」の本当の怖さ 免疫力がない乳幼児には「ワクチン」と「予防薬」で対応を
アメリカではすでに30万人を超える多くの妊婦が接種している。日本産婦人科医会理事で、産婦人医の倉澤健太郎さん(横浜市立市民病院)は、次のように話す。 「アブリスボは、臨床試験でも、実際の接種においても安全性が高いことがわかっています。それでも、より安全性と有効性を高めるため、当院では妊娠30週以降の接種を妊婦さんに勧めています」 課題もある。現在は任意接種であるため、問題(有害事象)が起きた際の補償が万全でないことだ。母親が接種するワクチンなので、胎児への補償がないという問題もある。
「妊産婦向けワクチンは安全性も有効性も非常に高いといえますが、どうしても躊躇されがちです。やはり国が安全性を担保し、定期接種あるいは補助により妊婦さんの支払う費用負担を軽減していただきたいと思っています」と倉澤さん。 なお、RSウイルスのためのワクチンには、高齢者向けの「アレックスビー(組換えRSウイルスワクチン)」もある。60歳以上の高齢者向けで、アブリスボと同じく1回接種の筋肉注射で、費用は自費で3万円程度だ。
■予防薬 一方、予防薬の抗RSウイルスモノクローナル抗体には、これまで「シナジス(パリビズマブ)」という薬が、早産児などのハイリスク児に使われてきた。保険適用で月1回の接種が勧められている。 今年3月に発売になったモノクローナル抗体は、「ベイフォータス(ニルセビマブ)」といい、1回の接種で約5カ月間、RSウイルス感染症の発症を抑制できる。ただし、ベイフォータスもシナジスと同様、保険適用されるのはハイリスク児のみだ。
■流行で入院させられないことも 峯さんによると、コロナ禍でRSウイルスに感染する機会がなかった子たちは感染しやすく、重症化しやすいという。 「昨年と一昨年はRSウイルス感染症の大きな流行があり、病院勤務の小児科医から『入院病床が確保できない』という報告が多数ありました。ハイリスクの子は予防薬で、そうでない新生児はワクチンで守ることが重要だと考えています」(峯さん)
大西 まお :編集者・ライター