「たかが風邪?ではない」生後12日で長期入院も「RSウイルス」の本当の怖さ 免疫力がない乳幼児には「ワクチン」と「予防薬」で対応を
■年間2万人の乳幼児が入院している 「乳幼児の2~3%はRSウイルス感染症が原因で入院しているという報告もあります。2~3%というと少なく思えるかもしれませんが、1年間に日本で生まれる赤ちゃん約80万人のうちの1万6000人から2万4000人が入院するという計算です」(峯さん) RSウイルスは飛沫感染や接触感染でうつるが、ほかのウイルスに比べて感染力や増殖力が強く、通常は3~8日ほど感染力が持続する。さらに免疫力の低い子どもや高齢者の場合は、症状が消えてからも1~3週間も感染力が持続することもあるという。
また、RSウイルス感染症は確定診断ができないこともあって、出席停止扱いにならず、原則的には高熱などの急性期症状がなければ保育園や幼稚園などに行くことができる。 「そのため、保育園や幼稚園、学校、病院、入院病棟、児童養護施設、老人ホームなどで集団感染につながりやすく、家庭内でも感染が広がりやすい」と峯さん。 予防法としては手洗いのほか、RSウイルスが流行しているときは人の出入りが多い場所へ行かない、風邪を引いている人との接触をできるだけ控えるといったことが挙げられるが、感染力の強さを考えると、完全に予防するのは不可能に近い。
そのため冒頭のケースのようにきょうだいがみんな感染し、上の子たちは軽症だったけれども、一番下の新生児が重症化するというケースが起こりやすいのだ。 ■RSウイルスワクチン・予防薬が登場 今年、RSウイルス感染症のワクチンと予防薬が相次いで登場した。 ワクチンは体内の免疫反応を利用して抗体を作らせる薬、予防薬は正確にはモノクローナル抗体といって、特定の病気に効果のある抗体が配合された薬だ。両方とも発症する前に使うことで、発症を予防したり、症状を軽減したりすることができる。
■ワクチン 今年5月から使えるようになったワクチンが、「アブリスボ(組換えRSウイルスワクチン)」だ。妊娠24~36週目の母親が接種すると、胎内の赤ちゃんに抗体ができる仕組みになっている。1回接種の筋肉注射で、費用は自費で施設によって異なり3万円前後だ。 妊娠中に接種可能なワクチンには、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチン、百日咳ワクチンがある。 インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチンは主に妊婦自身を守るためのものだが、百日咳ワクチンは子どもを感染症から守る効果がある。それにRSウイルスワクチンが加わった形だ。