渋谷にARのキノコ雲、ウクライナ戦地を3D化 戦争をデジタルで伝える人たち #戦争の記憶
戦争の現場で得られたデータを集めたアーカイブから伝わるリアリティーは、読売新聞の記者たちにも大きなインパクトを与えた。梁田さんは、現地取材を視野に入れて、渡邉さんと共同プロジェクトができたらと考えるようになった。 「これらのデータと、現場に行ったときに見たものを重ねたらどうなるか。そこにいる人の声を現地で取材し、そうしたデジタルコンテンツとともに届けたいというアイデアがあったので、どこかのタイミングで一緒に何かをつくりたいと思いました」 2022年4月、ロシア軍がキーウ近郊から撤退、その2カ月後、梁田さんは転勤でパリ支局に赴任した。会社からは夏以降のウクライナ取材の打診もあり、渡邉さんとのウクライナをテーマにしたプロジェクトがスタートした。
能登半島地震もすぐにデジタルマップに
8月から9月にかけて、梁田さんはウクライナに入って現地を取材。集めた情報をもとに、紙芝居をつくる要領で展開するストーリーを制作した。渡邉さんは受け取った写真や原稿と3Dデータを組み合わせ、コンテンツをつくっていった。梁田さんは振り返る。 「それぞれの強みを生かして、コンテンツに落とし込んでいったという感じです。私が思っていた以上のものが短時間でつくられていきました」
梁田さんができあがったコンテンツを上司に報告したところ、すぐに調整がおこなわれ、1カ月後に紙面の記事と連動する形で公開されることになった。 このコンテンツは評判を呼び、読売新聞は渡邉さんと連携を強めた。2023年4月から希望する社員が渡邉さんの下でデジタルコンテンツづくりを学ぶ「読売・渡邉研」がスタートした。2024年1月1日、石川県の能登半島でマグニチュード7.6の巨大地震が発生した際には、読売・渡邉研のメンバーを中心に、「令和6年能登半島地震被災状況マップ」を制作し、その日のうちに公開した。 梁田さんは、デジタルコンテンツの制作には、新聞記者やカメラマンたちの表現の幅を大きく広げる力があると感じている。 「デジタルコンテンツは、膨大な取材成果をより有効に活用できます。戦争の報道についても、膨大な蓄積を生かした新たなコンテンツを生みだせると思います」