渋谷にARのキノコ雲、ウクライナ戦地を3D化 戦争をデジタルで伝える人たち #戦争の記憶
日本では毎年8月になると、戦争を振り返るテレビ番組や新聞記事が多く発表されるものの、最近は、視聴者や読者の関心が得られにくいとも伝えられる。 だが、渡邉さんは「日付に紐づけて毎年報道することの意味はあります」と理解を示す。 「戦争末期の日本では毎日どこかで空襲があり、多くの人が亡くなりました。それらを俯瞰したり、世界で起きている戦争と重ね合わせたりする報道があってもいいでしょう。経験者が少なくなったなかで、戦争の悲惨さを伝える新しい手段の一つとしてデジタル技術があると思います」 渡邉さんの取り組みから刺激を受け、現代の戦争をデジタルアーカイブ化した報道関係者も出てきている。
ウクライナの戦地を3D化
特設ページを開くと、ウクライナの首都キーウ近郊の地図が表示され、7つの場所が示されている。その下段には、それぞれの場所に対応した写真が表示されている。 クリックすると、衛星画像、3Dデータ、現地の写真を組み合わせた、より詳しい情報を伝えるスライドが現れ、インタビュー記事も掲載されている。2022年10月に公開された読売新聞オンラインの特設ページ「ウクライナ 戦時下の復興 キーウ近郊からの報告」だ。
「侵攻開始から約半年後のキーウ周辺の様子を取材し、侵攻直後に取得されたデジタルデータと比べ、戦争の悲惨さとともに現地の人たちのたくましさを伝えました。現地の人の声は私が取材してまとめました。それらと侵攻直後の生々しさを伝える3Dデータを組み合わせたデジタルコンテンツとしてまとめることができたのは、渡邉さんのおかげです」 そう語るのは、このページの制作を主導した読売新聞記者、梁田真樹子さん(43)だ。現在パリ支局に駐在している。 2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、インターネット上には、戦況を伝えるさまざまな衛星画像や3Dデータが掲載された。渡邉さんはそれらの画像やデータが撮影、取得された場所を特定し、デジタルマップと重ねたものを連日、Twitterに投稿していた。すぐに世界の人たちと共同の「ウクライナ衛星画像マップ」プロジェクトへと発展した。 そんな渡邉さんの活動に注目した一人が梁田さんだった。 梁田さんは、デジタル技術に関心の高い社内の有志とともに定期的に勉強会を開いていた。2022年3月、勉強会のゲストとして招いたのが渡邉さんだった。勉強会の内容は「ウクライナ衛星画像マップ」プロジェクトにも及んだ。