中村橋之助 『紅翫』 一人で何役もやって見せるちょっと変わった大道芸人【今月の歌舞伎座、あの人に直撃!! 特集より】
『髪結新三』の新三もいる江戸の一場面として楽しんで
── 橋之助さんにとって常磐津の舞踊の面白さとはどんなところでしょう。 橋之助 この間も伯母から、僕の入る間が「常磐津っぽくない」と言われました。例えば長唄なら、こういういろいろな物語を織り込みながら風俗を見せる踊りはたぶん成立しないんです。『乗合船恵方万歳』だったり『どんつく』だったりのような。長唄が楷書なら常磐津は、行書、草書という感じ。竹本と清元の間にあって、台詞のような節、間をいっそう大事にしなきゃいけないのだろうなと。 ── 今回、若手の皆さんによる一幕ですね。 橋之助 どうしても若手だけで一幕となると雰囲気が固くなりがちなんですが、今回は(坂東)巳之助にいさんや(坂東)新悟にいさんたちにひっぱっていただきながら、そこに乗っからせていただいて楽しくその場にいることが大事かなと思いますね。それと第二部は、この前が(中村)勘九郎の兄の『髪結新三』です。今回に限ってですが、極端なこといえば、この紅翫の舞台に新三がそのままいてもいいのかなと。 ── あ、それは楽しい見方ですね。 橋之助 同じようにあの鰹売りがいてもいいですし。時間軸は同じ世界なので。江戸の市井の情景の一部にグッと入り込んでお芝居にすると『髪結新三』になるし、引きで全体を見てみると『紅翫』になる。そんなふうに楽しんでいただけたらうれしいですね。 取材・文:五十川晶子 <プロフィール> 中村橋之助(なかむら・はしのすけ) 1995年12月26日生まれ。中村芝翫の長男。祖父は七代目中村芝翫。2000年9月歌舞伎座〈五世中村歌右衛門六十年祭〉の『京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)』の所化と『菊晴勢若駒(きくびよりきおいのわかこま)』の春駒の童で初代中村国生を名のり初舞台。16年10・11月歌舞伎座『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』熊谷陣屋の堤軍次ほかで四代目中村橋之助を襲名。日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』 ほかテレビドラマや舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』(21年)等に出演。 <公演情報> 歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」 【第一部】11:00~ 一、ゆうれい貸屋 二、鵜の殿様 【第二部】14:30~ 一、梅雨小袖昔八丈 髪結新三 二、艶紅曙接拙 紅翫 【第三部】18:15~ 狐花 葉不見冥府路行 2024年8月4日(日)~25日(日) ※13日(火)、19日(月)休演 ※第三部は21日(水)貸切。幕見席は営業 会場:東京・歌舞伎座