【定年後・60歳からの働き方①】資格は需要や注目度ではなく、「学びたい」で選んで。 好きで学んだ資格は、新しい世界の扉を開くはず!
60歳以降の就職・転職に役立つ「資格」について紹介する新連載。第1回は、資格を検討する前に考えておきたい「セカンドキャリア・プラン」の立て方について。ミドルシニア世代のキャリアコーチであり、時には「昼スナックのママ」としても気軽にキャリア相談に乗る、木下紫乃さん(スナックでは紫乃ママ)にお話を伺った。
「スナック」だからこそ、キャリアや人生について気楽に話せる
企業研修やミドルシニア世代向けのキャリアコーチングを行う木下紫乃さん。さまざまな人の相談に乗るうち、セミナーなどの堅い雰囲気の場ではなかなか話しにくいことを「もっと気楽に本音で話せる場所を提供したい」と、東京・赤坂で「スナックひきだし」をオープンした。 木下さんが「紫乃ママ」としてお店に立つのは週に1回。その気の置けないトークを楽しみに訪れるお客さんで、お店は賑わっている。 そして、紫乃ママが、居合わせたお客さん同士をどんどんつなげるので、訪れた人は普段は出会えない分野の人たちと自然と語り合うことに。もちろん、黙って聞き役に徹するもよし。 「異業種の人たちから新たな情報を得たり、さまざまな人の価値観に触れたりすることで、自分の世界が広がる」 それが、スナックひきだしを訪れる魅力。なかには、この店を訪れたことで新しい人生プランが見えてきたという人もいるとか。 そこで今回、「60歳からの就職や転職に役立つ資格」についての連載をスタートするにあたり、定年以降の第2の人生プランをどのように描いていったらいいのか、そしてそのために資格を取ることは有効なのか。取るとすればどんな資格がいいのか。「スナックひきだし」にお邪魔して、伺ってみることにした。
資格に飛びつく前に、「どう生きていきたいか」を思い描くことからスタート
Q. 紫乃ママさん。OurAgeの読者は40代、50代の女性が中心ですが、60歳以降の第2の人生について聞いてみると、「会社員時代とは異なる業種に就きたい」あるいは「子育てや介護で中断した仕事人生をやり直したい」など。その背景にある思いはさまざまですが、60歳以降も働きたいと思っている人が多いようです。 紫乃ママ:そうですよね。社会に出て働きたいというのは、自然な欲求ですよ。労働して対価を得ることはいちばんわかりやすい社会参加の形。何かをしたときに対価としてお金がもらえるというのは最高です。 もちろんボランティアもよいけれど、そこにお金がつくことで自己肯定感も上がります。働きたいという気持ちは健全だと思いますね。 Q. それで、この連載では「60歳以降の転職や就職に役立つ資格」について紹介しようと思うのですが、そもそも、資格というのは60歳以降の転職や就職に役立つのでしょうか? もし、役に立つとしたら、どんな資格を取るのがいいでしょうか? 紫乃ママ:「資格は役に立つか」とか「なんの資格を取るべきか」とか考える前に、まずは「この先、60歳以降、自分はどんなふうに人生を送りたいか」ということを考えるのが先かな。 でも、実際、そういうビジョンがある人は少なくて、それが思い浮かばない人のほうが多いと思うんです。だから、そういう人には逆方向から考えたらどうかなってアドバイスします。 逆方向というのは、「もう、これは嫌だ」「これはやりたくない」ということを排除することから始めるということ。 たいてい40代、50代にもなれば、そんなふうに思うことが、何かあるのではないかしら? そういうことを排除すると、やりたかったことの形が見えてくるんですよ。 私たちの世代って、若い頃「やりたいことを見つけろ」「目標を見つけてそこに向かって頑張れ」と言われてきた世代。だから、そういう逆の発想をするのはちょっと難しいかもしれないけれど、家を選ぶときのことを考えてみて。 いきなり「これが理想」という家を見つけるのは難しいですよね? でも、「日当たりが悪いのはいや」「駅から何分以上歩くのはいや」とか、譲れない条件があるから、まずはそういう条件に合わないものをちょっとずつちょっとずつ排除していくことで、徐々に希望の物件に近づいていったりします。 入り口としてはそういう方法もアリだと思いますね。