ネットにあふれるクルド人ヘイトの異常さ 差別される側の視点に立ってみたことありますか?「一部の問題で全体を判断しないで」
「妹さん、とってもきれい」。そう伝えると、花嫁の兄オザンさんは顔をほころばせた。だが、すぐに表情に陰りが差す。「妹は幸せになれないってSNSで言うやつがいたんです。許せなかった」。そうしているに間も、彼の投稿に対する返信通知が何回も来ている。「赤坂さん、俺のスマホ見て。またあいつら言ってる」 顔の見えない不特定多数から家族に向けられる憎悪には、やはり恐怖を感じる。「確かに悪いことをしているやつらはいる。批判もわかる。でも、個別のことから集団を批判するのは違う」 ▽母国から迫害、資産凍結に クルド人は日本に逃れてきた後も、本国からの政治的圧力を受け続けている。トルコ財務省は2023年12月までに、日本の「日本クルド文化協会」を含む2団体と個人に対してトルコ国内の資産凍結を決定した。非合法武装組織クルド労働者党(PKK)を支援したとの主張だ。 文化協会の代表理事チョーラク・ワッカスさんは、トルコ政府の圧力だと説明する。「テロ支援もテロ活動も行っていない。トルコ地震を受けて募金を呼びかけたが、全てテント設営など復興の支援に使った」
チョーラクさんは、政権批判が凍結につながったと考えている。「私たちは、中国のウイグルやミャンマーのロヒンギャと同じ。政府とクルド人勢力が和解し、トルコ民族とクルド民族との共生が実現する事が1番の願いです」 日本でもクルド人に対する風当たりは強い。社会になじめず、問題を起こす同胞もいる。私たち日本人はどう向き合えばいいのか。チョーラクさんは言葉をつむいだ。「クルド、トルコのどちらかに肩入れせず、間違っている時にはたしなめるトルコの友人、クルドの友人であってほしい」 ▽高まる不安、理解しあえる社会を 在日クルド人の女性らが、母語や教育の重要性について学ぶセミナーがあり、足を運んだ。会場には不安の声が満ちていた。「中学生の息子は、クルド人だからと学校でいじめられる」「日本ではヘイトが高まっているが、ヨーロッパの他の国ではどうなのか」 セミナーでは国内外の言語学や政治学の専門家が登壇した。ウィーン大学法学部プロジェクト長、ナーイフ・ベズワーンさん(政治学)は、日本の現状がドイツの1990年代と似ていると危機感を口にした。移民へのヘイトが高まった時期だ。
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