ネットにあふれるクルド人ヘイトの異常さ 差別される側の視点に立ってみたことありますか?「一部の問題で全体を判断しないで」
「日本人の大人にしっかりと話を聞いてもらったのは、今回が初めてだったのかもしれないね」 ▽SNSで家族に攻撃、「黙ってられない」 埼玉県川口市にはクルド人が多く住む。東京に比べて物価や居住費が安く、言語的に近しいイラン人が先に住んでいたことがきっかけとされる。トルコから出国する一因はトルコ政府にある。長年、クルド人に言語や独自の文化を禁じ、同化政策を進めてきた。弾圧が激化した1990年ごろから、日本に逃れてくる人が出始めた。現在は少なくとも2千人が川口市や蕨市に住むという。 30年以上が経過しているため、若い世代は日本で生まれ育った人が多い。25歳のクルド人、オザンさんもその一人。私とは大学院時代からの付き合いだ。オザンさんは、弾圧から逃れた両親に連れられ、幼少期に来日した。トルコの記憶はない。難民申請は認められず、彼も「仮放免」の状態だ。 小学校の頃にはいじめられ、「居場所がない」と悩んだ。そんなとき、ドキュメンタリー映画「東京クルド」に出演した。講演会などに呼ばれ、さまざまな人々と知り合った。
オザンさんは12月、国際人権NGO、アムネスティ・インターナショナル主催の講演会に登壇。こう訴えた。 「振る舞いや考えが全く同じ人間なんていない。一人が悪いから全体が悪いと思わないで」。自身も街ですれ違いざまに、耳元でこう言われたことがある。 「死ね、クソ外人」 講演会後、参加者と撮影した記念写真が、悪意を持った形でネットに拡散された。家族や恋人まで中傷の標的となった。オザンさんも黙っていない。SNSで反論した。「クルド人全てが犯罪者ですか?」「どういう神経してるんだ。なんで書く人はこんな考え方しかできないんだろう」 自分への誹謗中傷は気にならない。ただ、家族に矛先が向いたことに黙っていられなかった。 私は2023年末、オザンさんの妹の結婚式に招いてもらった。会場に入ると世界は一変。クルド音楽に合わせ、色とりどりのドレスを着た女性やスーツ姿の男性たちが輪になって舞っていた。
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