ネットにあふれるクルド人ヘイトの異常さ 差別される側の視点に立ってみたことありますか?「一部の問題で全体を判断しないで」
ドイツのクルド人の中には議員や弁護士、医者など社会的地位が高いとされる職業に就く人も少なくないという。ベズワーンさんは指摘する。「日本でも言語や文化を学んだクルド人が地域に溶け込み、良いイメージに変わっていく可能性もある」 セミナーの最後に、日本に17年間住むというクルド人女性が手を上げた。「忘れられない思い出がある」と、エピソードを紹介した。 タクシーでクルドの音楽をスマートフォンで再生した時のことだ。「すごくきれい。どこの国?」と運転手から尋ねられた。それをきっかけにクルド文化に関する話が弾んだ。「互いの文化などを通して、話し合うことができればいい。それで十分」。会場からは拍手がわいた。 【取材後記】SNSの向こう側には生身の人間がいる 文化が違えば摩擦も起きる。私自身、大学院時代に支援活動に携わる中で、ゴミ出しや育児、金銭感覚など日本との違いに驚くことも少なくなかった。冒頭で紹介した昨年7月の事件のように、犯罪に関わるクルド人がいることも事実だ。
ただ、必死で日本語を勉強し、看護師や保育士になりたいと努力を重ねる子どもたちもいる。母親たちは日本の慣習になじもうと、私に細かなルールや祭り文化などを何度も質問してきた。文化協会は、防犯パトロールやゴミ拾いで地域に溶け込む活動を重ねている。元旦に発生した能登半島の地震後では、トルコ地震の恩返しにと、現地で炊き出しのボランティアを実施したクルド人たちもいた。 一部のクルド人の行動から、民族全体を危険とみなして社会から排除しようとする空気には違和感がある。逆の立場に立って考えてみたい。私たちが海外に移住し、現地で一部の日本人が事件を起こしてルールを守らなかった場合、日本人全体が糾弾されるべきだろうか。 SNSの向こう側に、投稿を複雑な思いで目にし、苦悩している生身の人々がいる。攻撃的な投稿をする前に、彼らに思いをはせてほしい。
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