進まぬ『免許返納』 減らない『高齢者の事故』 でも運転をやめると要介護状態の危険度が“8倍”になったというデータも
■免許証返納件数は2019年の35万件がピークで年々減少
認知機能が低下し、事故のリスクも高まることから、年齢ともに免許の返納を考える人も多くいる。しかし、75歳以上の運転免許返納件数は、2019年のおよそ35万件をピークに年々減少している。 九州大学大学院 志堂寺和則教授:年齢が上がってくると、運転が下手になったかなという思いは多少ある。自分でもなかなか認めたくないですし、特に地方に行くと、公共交通機関が不便なところはいっぱいある。そういうところを中心に、免許返納はなかなかいかない。 内閣府が自主返納した高齢者を対象に行った調査では、「自主返納などで不便を感じているか」という質問に対し、都市部は25パーセントの人が不便と答えた一方、過疎地では60.5パーセントの人が不便と回答。 都心部と地方では、免許を返納した後の交通手段に大きな差がある。
■生活を維持するために免許の返納が進まない…70代の夫婦の実情
大阪府島本町に住む70代の夫婦。日々の生活に車は欠かせない。この日も車で近くのスーパーへ。 島本町在住 70代の夫:この坂が結構きついんですよ。歩いていると。 車で片道5分ほどの距離だが、徒歩だと坂道を20分近く歩かなければならない。妻は3年前に免許を返納したが、夫の運転で週に1、2回ほど買い物などに出かけていて、夫の免許返納には、まだためらいがあるという。 島本町在住 70代の夫:いつかは(運転を)やめないと、いけないんだろうなというので、そうなったときに、どういう生活ができるのかは、すごい心配です。今は。 百貨店に行こうと高槻市の中心部へ。車で行くと20分ほどだが、免許を返納すれば使える手段はバスと電車。自宅と最寄りの駅をつなぐバスは20分おきに1本、さらに電車に乗って移動すると、待ち時間なども含め片道1時間ほどかかるという。 子どもは大阪府外に住んでいて、すぐに来られる距離でないこともあり、免許を返納してもこれまでと同じ生活を送れるのか、不安は大きいという。 島本町在住 70代の夫:バスが本数減っているのもあるし、(返納すると)出歩くのが難しくなってしまう。家の中にこもってしまうようになると、どんどん老化が進むことになっても困る。できたらあと10年ぐらいは乗りたいなと思っていますけどね。 今の生活を維持するため免許の返納が進まない現状。今後さらに高齢者が増える中、事故を減らすためにも必要な支援を考えなければならない。