人生100年時代でも、健康寿命は非常に短い。延ばすためには、脚力と血管力の両方が必要。歩行速度の低下が、動脈硬化の増加に
厚生労働省の「令和4年 国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の1日の歩数の平均値は男性が6465歩、女性が5820歩で、直近10年間で減少したそうです。そのようななか、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也先生は「歩かない生活を送ることは、年をとると歩けなくなることに直結する」と指摘します。そこで今回は、伊賀瀬先生の著書『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』から、いつまでも歩ける人になるための心がけを一部ご紹介します。 【書影】抗加齢医学研究のトップランナーが、一生歩ける人になるための心がけを紹介。伊賀瀬道也『百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする』 * * * * * * * ◆なぜ、年をとると歩けなくなるのか 長年の歩かない生活習慣が元凶 日本人の寿命は年々延びており、最近は「人生100年時代」といわれるようになりました。 でも、たんに寿命を延ばすだけではなく、介護が不要な状態を保つ「健康寿命」を延ばすことがより重要であるとの認識が高まっています。 健康寿命とは、厚生労働省によると、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいいます。 2019年の健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳となっており、人生100年に対し非常に短いことが指摘されています。 健康寿命が短いということは、寿命が長くなっても、自分の面倒が自分で見られない期間も長いことになります。 健康寿命は、「食事を自分でとれる」「トイレが自分で使える」「お風呂に自分で入れる」など、日常生活ができる期間といいかえることができます。 それを防ぐには、自分でしっかり歩けることが重要な要素であるといえます。
◆さまざまな場面で脚力が必要 では、私たちはなぜ、年をとると自分でしっかりと歩けなくなるのでしょうか。 一般に歩けなくなる原因としては、加齢(年をとること)が思い浮かびますが、これ以外の生活習慣として、 「1日中、座りっぱなしである」 「外出しても車などを使って歩かない」 などのライフスタイルが思い浮かぶことでしょう。 つまり、歩かない生活を送ることは、年をとると歩けなくなることに直結するといえるのです。 歩くための力は、「脚力」といいかえることができます。日常生活では、単純に「歩く」ことに加えて、階段を上り下りすることや、寝たり座ったりした状態から「立ち上がる」など、さまざまな場面で脚力が必要です。 そこで、普段から脚力を鍛えて、生活のなかでつまずいたり転倒したりすることを防ぐのが大切であることは、容易に想像できると思います。