異例の45分一本勝負、狙いが当たった川崎 ゲリラ雷雨多発の昨今、こんな試合が異例ではなくなるかもしれない
◇コラム 大塚浩雄の「C級蹴球講座」 ◇22日 J1第28節 浦和―川崎(埼玉スタジアム) ”後半”開始早々、川崎が猛然と攻めた。8月24日、前半を終えて雷雨のために試合中止となった第28節。3カ月後に後半キックオフという一戦は、浦和の1―0からスタートするという異例の戦いとなった。 両チームとも完璧にフレッシュな状態で、試合時間は45分。負けている川崎は攻めるしかない。鬼木監督の狙いは明確だった。立ち上がりから全力で点を取りにいく。原則、試合中止時点に出場していた選手で試合を再開し、控え選手も同じメンバーで戦うが、ケガなどで出場が困難な場合は選手を代えることができる。鬼木監督はケガで戦列を離れている中盤の要・脇坂に代わりストライカーの小林を選択した。 「このレギュレーションだと、やはり点を取る、エースを入れるべきだろうということで、最初から投入した。トレーニングマッチも含めて、悠(小林)は点を取った。しっかりと結果を出したので使った」と指揮官。 狙いは当たった。立ち上がりからハイプレスをかけて押し込み続けた川崎は波状攻撃を仕掛け、後半10分、左の三浦が上げたクロスを小林がヘッドで決めた。同点。流れが完全に川崎に傾いたかに見えた。 しかしゴール直後、鬼木監督は無駄に動かざるを得なかった。大島に代えて川原を投入。「アクシデントがあった。脚の方が気になっているというので代えた」。この交代をきっかけにしばらくの間、川崎の攻撃が停滞した。「45分という誰にも想像ができない、予想がつかないゲーム。勝ち越しまでいければ良かったが、そこは難しかった」と鬼木監督。 さらに「パワーをどんどんつぎ込まなければならなかった。1点を取った後、もう少し押し込んだ中でプレーできればなと思った」と話した。それでも「選手はイレギュラーの中、チーム一丸となって戦ってくれた。非常に満足している」と振り返った。 いつもなら90分を想定してゲームプランを組み立て、選手の状態、ゲームの流れを見ながら交代カードを切っていく。しかし、45分一本勝負というあり得ない状況での戦いは、両チームとも選手交代枠5人を45分間に使い切り、目まぐるしい攻防の末、あっという間に過ぎていった。 シーズン途中に指揮官が交代した浦和にとっては、前半をヘグモ監督が率い、後半はスコルジャ監督が指揮を執るという、前代未聞の一戦となった。地球温暖化の影響でゲリラ雷雨多発の昨今、これからは、こんな試合が異例ではなくなるかもしれない。 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)。
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