「自分がわからないから危険だと、ブレーキをかけないで」 小学生の親が意識したい「プログラミング教育」のとらえ方
高濱 なるほどね。知識を教えてもらうのではなく、自分で何かを作ることから始まる学びっていいですね。 讃井 僕は学部でも大学院でも教育を研究したんですが、そのきっかけって高校時代にもった違和感だったんですよ。 高濱 讃井さんの高校って、孫正義さんや堀江貴文さんが出た学校ですよね。イノベーターであふれていたんじゃない? 讃井 いやいや、彼らは超超レアです。成績優秀な人の大半は中学生のうちに医者や弁護士に進路を定めて勉強していました。僕はそれが少し息苦しく感じて、人が学ぶってなんだろうって思って。高3になると学校にはあまり行かず家で勉強していることが多かったですね。 高濱 そのころの讃井さんは何になりたかったんですか。 讃井 ゲームクリエーターかな。でもそのころはネットがあっても、それを利用してクリエーターになろうとする時代ではなかった。そんな活用法に気づけなかった。東京に出て、高校時代からいろんな活動をしている同世代と出会って都市部と地方の格差を感じましたね。今までいた世界は狭かったって。でも基本、地元大好き人間で、大学で東京に出てくる前の晩には泣きましたけどね(笑)。 高濱 同じ九州出身の身としてはなんかわかるなあ。 讃井 今でも僕のベースは「地方人」。だからこそ、プログラミング教育を通して可能性の格差をなくしたいという思いもあるのかもしれません。スキルの差も認識の差もなくしたい。 高濱 親が狭い価値観の再生産から抜け出すには、まずはプログラミングや生成AIで親子一緒に遊ぶのがいいですね。 讃井 はい、デジタルは子どものほうが得意だから、親は自分がわからないから危険だと、むやみにブレーキをかけないようにしてあげてください。くれぐれも天井を低く作らないようにしてほしい。 高濱 ……思えば20年前の僕はデジタル否定派だったなあ。外に出なくなる、人とつながれなくなるって。でもいまやデジタルのほうがより多くの人とつながれる。これも時代の変遷だね(しみじみ)。 ※前編<小学生のプログラミング学習、何から始めればいい? 2025年から「情報1」が大学入学共通テストの必須科目に>から続く (撮影/矢部ひとみ 構成/篠原麻子) ○高濱正伸/花まる学習会代表。1959年熊本県生まれ。東京大学大学院農学系研究科修士課程修了。武蔵野美術大学客員教授。環太平洋大学特任教授。算数オリンピック作問委員。93年に「メシが食える大人に育てる」の理念のもと「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を軸にした「花まる学習会」を設立。会員数は23年で2万人を超えている。 ○讃井康智/ライフイズテック取締役最高AI教育責任者。1984年福岡県生まれ。東京大学教育学部卒業後民間企業に就職した後、同大学大学院教育学研究科で学習科学を学ぶ。全国の教育委員会、小学校、保育園などで21世紀型の学びの実現をサポート。2010年にライフイズテックに参画。文部科学省「教育データの利活用に関する有識者会議」委員、NewsPicksプロピッカーも兼任。
篠原麻子