森林を脅かす「音」を検知。生物多様性を守る、音響モニタリング技術
熱帯雨林と聞いて、どんな「音」を想像するだろう。野鳥のさえずり、野生生物や虫の鳴き声、木の葉に落ちる雨の音......そんな自然の音が浮かぶかもしれない。しかし、実際の森林では、違法に木を伐採するチェーンソーの音や絶滅危惧種を狙う密猟者の銃声、といった自然を破壊する音が鳴り響いているかもしれない。 短期的な利益を最大化しようとする人間の行為は、その土地の生態系に多大な圧力をかけ、生物多様性にかつてない深刻な影響をおよぼしている。さらにそれは、長期的に人類の生命維持基盤を脅かすことへもつながるだろう。 違法伐採や密猟を防ぎ、生物多様性を保護するために最先端技術を活用する非営利団体であるレインフォレスト・コネクションは、絶滅危機にある生態系や絶滅危惧種を守るための新たな取り組みを開始した。それは、環境音響学、AI(人工知能)、音響技術システムを活用し、生物多様性の測定とモニタリングを可能にするというものだ。 それが、太陽電池で駆動する音響ストリーミング装置「ガーディアン・デバイス」だ。樹冠の高い場所に設置され、森林の違法伐採や密猟を24時間365日リアルタイムで検知する。デバイスに録音された連続音声は、即座に分析される。 このAI音響システムは、特定の動物種による発声のほか、密猟者が使用しているトラックや車、オートバイの音など密猟に関連する活動パターンを認識。それが、パートナーシップを組んだ地元の保全活動組織に伝わるようになっている。また、録音された大量の生態系データは、生態学者たちにも共有される。 レインフォレスト・コネクションのCEOであるブルハン・ヤシンさんは、Google.orgへの取材でこのように話している。 ゛音は環境を理解するユニークな方法です。私たちの目は素晴らしい視野を持っていますが、一度に一方向しか見ることができません。ですから、遠くのものを識別する場合、音を聞くことが私たちに利用できる最高の感覚なのです。 私たちは約1億の録音を持っています。これは、約190年分の連続音声に相当します。おそらく歴史上、世界最大の音景観コレクションだと思います。そして、数日おきに100万から200万の録音を追加しています。” レインフォレスト・コネクションのモニタリングシステムは、月ごと、年ごとの変化を比較することができる。そして、その情報は土地の管理や政策の変更、限られた資源の配分などに利用される。 熱帯雨林は、生物多様性への理解を深める宝庫だ。私たちはそんな熱帯雨林の「不協和音」に耳を傾け、生態系の一部として人間がどのように行動すべきか、考えていくべきだろう。