辰吉と伝説世界戦の薬師寺ジムから開設10年目で初の新人王。その名は森武蔵
辰吉―薬師寺の伝説の王座統一戦は、ユーチューブで何度も見た。 「試合後、会長の顔は腫れていなかった。ディフェンスのいい証拠。ジャブからしっかりとボクシングを組み立てる。でも僕とはタイプが違う」 よくありがちな「会長が理想です」とも言わない。 「理想の選手などを口にしたら、それ以上はないでしょう。負けず嫌いなもんで」 取材をしていても、18歳に論破されてしまう。 では、どんなボクシングを? 「完璧なボクシング。打ち合いでも、離れても、どちらでも一番」 ふてぶてしい面構え。なるほど頼もしい。 将来のプランは? 「ボクサーの寿命は短い。強い相手とやって、いち早く世界チャンプになりたい」 薬師寺会長に、その可能性を聞く。 「僕の新人の頃とくらべてはるかに上。素材が違う。持っている力が違う。しかも、自己管理ができてオーバーワークになるほど練習するからね。まあ、日本、OPBFの王者は間違いない、その先の世界となると、まだわからないけどね。ひとつひとつクリアしていくこと」 練習熱心のエピソードは成功への資格。 今回の試合前にスパーはできなかったが、故郷の熊本で、日本一の石段と呼ばれる「釈迦院御坂遊歩道」の3333段の階段を一日に5往復する猛烈な合宿を張ってきたという。 この日、後楽園に集まった2005人の観衆は、とんでもない怪物の夜明け前を目撃したのかもしれない。4月1日に名古屋でプロ第6戦目が予定されている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)