都心部の億ションはまだ「バブル」とは言えない…!一極集中で高騰する今のマンションと「バブル期」との決定的な違い
ダブルインカム世帯の財務状況はまだ余裕
以上から東京23区で比較的高額の物件を購入している代表的な世帯像は、共稼ぎ世帯、世帯年収1000万円以上、平均借入額は6000万~7000万円と見なしてまず間違いないだろう。共稼ぎ世帯にとって時間は貴重であり、勤務先が都心部である限り、通勤時間を最小化するために都心部のマンションを選択するのは必然的であろう。 そこで東京23区で新築マンションを購入している共稼ぎ世帯を想定し、返済が持続困難になるような財務的脆弱性が生じていないか、4通りの試算をしたのが図表3である。 ■図表3 元利均等払いの返済額 ケース1は、上記記載の平均値的な共稼ぎ世帯のケースであり、自己資金比率は10%で、変動金利0.5%の借入を想定した。この場合の返済額は月間19.2万円、年間231万円になるが、年間元利金返済額は世帯年収の20.5%(以下「返済比率」と記す)である。通常同比率は30%までが無理のない範囲であるという基準(3割ルール)に照らせば問題ない。また、現在の東京都心部の賃貸マンションの家賃は1LDKで月額18万円~23万円程度なので、家賃より多くはない。 ケース2は、1の条件のうち借入金利が2.0%まで上昇したケースだが、返済比率は25.3%であり3割ルールに抵触せず、まだ余裕がある。ケース3ではケース2より15%年収が低い世帯で、金利が2%まで上昇した場合を想定した。この場合の債務比率は29.8%となり3割ルールぎりぎりとなる。ケース4は、ケース2の条件で1億円の物件を購入したケースだ。この場合は債務比率が35.5%まで上がるので、返済は苦しくなる。 ちなみに図表左端(黄色)のケース0は、ケース1の条件の下で住宅ローン金利が90年前後のバブル期と同じ5.5%(当時の住宅金融公庫のフラット35、適用固定金利)になった場合だ。この場合は返済比率が38.9%となり、返済が生活を圧迫する度合いがかなり高くなる。 以上から、東京都の新築マンションの購入を想定しても(1億円を遥かに超える高額物件でない限り)、現状までのところその代表的な購入層にとって、過去のバブル期のような無理な購入が行われているわけではないと言えそうだ。 もちろん図表2に示した様に都心6区では2億円越えが最多価格帯になっている。しかしこのクラスの物件を購入するのは、内外の資産家を含む富裕層が主体であり、所得水準で東京の上位中間層から準富裕層が購入しているわけではなかろう。