「運賃4割引」「グリーン車無料」お得な特典も! JR東日本が金融サービス「JRE BANK」開始! さまざまな鉄道会社がネット銀行を始める理由とは?
◆人口減少を見据えて新たな財源確保へ
吉田:では、鉄道会社がインターネット銀行を始める理由は何なのでしょうか? 塚越:鉄道業界は、コロナ禍で大きく赤字になったということが理由の1つとして考えられます。また日本は人口減少に向かっているので、これからは別の手段で収入源を確保する必要があります。 さらに、昨今はファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)をかけ合わせた「フィンテック」という言葉が盛り上がっていますが、実際にさまざまな新しい金融サービスが登場しています。 JR東日本も新たな金融サービスを手掛ければ、鉄道利用者の消費や資産に関するデータもこれまで以上に得られるので、ニーズを把握して新しい事業に活用できると考えたのだと思います。 JR東日本を利用するユーザーは非常に多いので、乗客の生活圏とマッチした新規ビジネスを展開して、いわゆる「経済圏」の囲い込みをこれまで以上に加速しよう、という狙いがあります。 今回は楽天銀行のサービスを利用していますが、楽天はまさにさまざまなサービスを連携して、「楽天経済圏」を作っている企業です。こうしたユーザーデータの活用を怖いと思うかどうかは人によりますが、多くの企業がこうした経済圏の獲得を考えています。 また、ダイヤモンド・オンラインの記事によると実際、去年の秋に京王電鉄が住信(すみしん)SBIネット銀行のサービスと提携して開始した「京王NEOBANK」では、若年層や子育て世帯といった、これまで関わりが薄かった顧客層との接点ができたことで、結果的に自前の住宅ローンの提供が可能になった、といったメリットもあるようです。このように、既存の銀行事業者と提携して、顧客に金融サービスを展開する企業が増えています。
◆儲けが出れば“赤字路線”のインフラ維持に役立つ可能性
ユージ:鉄道会社のインターネット銀行が持つ可能性と課題は何でしょうか? 塚越:まずは課題として、既存の銀行と提携するといっても、マーケティングや広告にもお金がかかりますし、何より金融はさまざまな規制があるので、簡単に儲けにつながるかといえばそんなに簡単なものではないという点があります。 次に、身も蓋もない話ですが、やはり「どのように儲けるか」ということ。そして、それ以上に「儲けの配分」が鍵になると思います。鉄道は公共的なインフラですが、この番組でも取り上げてきたように、地方は赤字路線が問題になっています。例えばフィンテック関係で儲けて、その儲けを「赤字の事業に補填しよう」ということになるのかどうかも論点だと思います。 JR東日本は関東だけではなく東北、山梨県、静岡県、長野県の一部も入っています。その上で、こういったサービスがある程度成功するとなると、他の鉄道でも活用する流れになると思います。そうなると生活者にとってもいいことが起きます。儲けを出して赤字の事業に補填していく流れができて、長期的に我々の「公共インフラ」を守るためのサービスになってくれるといいなと思います。 (TOKYO FM「ONE MORNING」2024年5月2日(木)放送より)