青春18きっぷ“改悪”で失われる「豊かな旅」 ネットで不満大噴出、大幅ルール改変の裏にあるJRの狙いとは
JR全体を象徴する商品
当然ながら青春18きっぷは数ある商品のひとつであり、営業実績などに従って改廃をともなうのも自然なことだ。しかし同時に40年超にわたって定着した商品ゆえ、扱いを軽んじれば今後の鉄道利用そのものにも響きかねない。 SNS上では利便性の悪化を嘆く声とともに、 「入門者のハードルを上げることが、将来の利用者の減少につながる」 と、長期的な視野に立った批判も見られる。近年のJR各社には、 「将来の鉄道ユーザーを育てる」 施策に欠けている。JR東日本の「大人の休日倶楽部」やJR各社の「ジパング倶楽部」など、手厚い中高年向けのサービスに対し、若い世代への優遇策は少ない。全年齢向けの青春18きっぷが「最後のとりで」になっているのが現状だ。 拙稿「「鉄道旅行」の少ない今の若者は、将来新幹線の“ヘビーユーザー”になってくれるのか? という根本疑問」(2024年4月6日配信)でも述べたように、現在、「ジパング倶楽部」の会員となり各地を旅行する人々は、若い頃に「周遊券」などの格安サービスを享受し、鉄道旅行の便利さと楽しさを経験できた世代だ。その「周遊券」も既になく、航空各社の割引制度や格安航空会社(LCC)、高速バスが充実した今、鉄道を利用する契機は相対的に低下した。 こうした状況にあって、安価な上に自由度の高い青春18きっぷは、鉄道に詳しくないライトユーザーにも鉄道利用の間口を広げる貴重な存在だ。知名度の高い青春18きっぷは、JR全体を象徴する貴重なブランドともいえる。 今回のルール変更を受け、青春18きっぷの最大の魅力が「安さ」にも増して 「自由度」 にある、との意見がSNSを中心に展開されたことは、注目に値する。青春18きっぷが実利にとどまらず、楽しみや文化までも提供してきた功績を、改めて認識したい。 課題とされてきた並行在来線の利用問題が解決されないまま、特長だったはずの自由度も低下しては、ユーザーが離反し、青春18きっぷが自然消滅することも視野に入る。そうなったとき、利用者はJRの新幹線や特急でなく、より楽しく柔軟性のある他交通機関に流れかねない、ということをJR各社は意識すべきだろう。
豊科ホタカ(新聞記者)