女?男?それとも?多様な性のあり方 ~「トランスジェンダー」のリアル
「そうか、自分はトランスジェンダーだったのか」
自分の身体が女性であることに強い違和感を抱き続けてきたげんだが、性指向についてはこだわりが薄く、性別を問わずにさまざまな人と付き合ってきた。 そして30歳を目前にして、仕事関係で知り合った男性と結婚する。「根本の価値観が合ったんだろうね。いい人だったよ。夫が養うとか妻が家事するとかのルールがない。自分の生活は自分で何とかする。分かりやすい生活スタイルだった」。竹細工の師匠に出会い、本格的に職人の道を歩み始めたのもこの頃だ。 「別に男の人と結婚することに抵抗はなかったよ。子供も欲しいと思ってたし、普通にやることもやってた」と当時を振り返るげん。「でもさ、例えばお腹に子どもができて"自分の体が変化する"っていう具体的な想像ができてなかったんだよね。自分の胸からおっぱいが出るとかさ。結婚して子どもがいたら、"普通"の人として世間に紛れられるんじゃないかと無意識に思っていたんだろうね。結局子どもはできなかったけど、それでよかったと思ってるよ」 結婚していた間は髪の毛を伸ばしていた。「髪を長くさえしていれば大丈夫、周りからは"普通"に見えるはず、って無意識に思っていたんだろうね。今思えばだけどね。ちょっと変だね」 げんの方向性がすこしづつ変わり始めたのは3年前のことだ。「テレビでたまたまトランスジェンダーについて扱っている番組を見たんだ。『あれ?もしかして自分も…?」って思った」 番組で紹介されていた東京の団体にメールをして、その団体が講師をするトランスジェンダーの勉強会に参加。そこで初めて当事者たちと話した。毎日の生活のことや仕事のこと、性別適合手術の話で盛り上がった。 「それまでずっと、自分の気持ちと身体が不思議だった。自分と同じ性と思える人にも会ったことがなかったし、こんな人間は世の中に自分だけと思っていた。でも、こんなにたくさん自分と同じような仲間がいるんだって分かって、すごく嬉しかった」 げんは今まで自分の性に関して得体の知れないさまざまな矛盾や違和感があったが、無意識に見ないように、気付かないように生活してきた。その原因らしきものが分かり始めて思いがジワジワ沸き上がった。「そうか、自分はトランスジェンダーだったのか」