赤ちゃんポスト、慈恵病院理事長「命の保障は匿名と引き換え」…実名化要求に懸念
親が育てられない子を匿名で託せる「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を運用する慈恵病院(熊本市西区)は13日、熊本市の専門部会が「匿名は容認できない」とした報告書について、理由や見解を求める公開質問状を市に提出する方針を明らかにした。病院の蓮田健理事長は「ゆりかごは、女性の匿名と引き換えに赤ちゃんの命と健康を保障している」と述べ、実名化を求めることへの懸念を示した。
病院によると、赤ちゃんの預け入れは、誰とも話さずに扉を開けて保育器に託す方法か、インターホンで看護師らを呼び出して相談してから判断する方法が選べるという。後者は、ためらいを持つ人や身元を伝えたいという意思がある人が選択することが多い。
しかし、報告書の公表後、匿名での預け入れを希望する女性がインターホンを鳴らし、「『匿名はやめてほしい』というニュースを見た。預け入れの流れが分からなくなった」という趣旨の相談をした事例があった。
蓮田理事長は、赤ちゃんの託し方に混乱が生じている可能性を指摘し、「(預ける)選択肢がなければ、生まれたときにパニックで殺してしまうこともある」との危機感を示した。
医師や弁護士らで構成する市の専門部会は、ゆりかごの運用状況を検証し、5日に報告書を公表した。