「演説や人心掌握術だけには非常に長けた政治家?」小泉進次郎が街頭演説で見せた“惹きつける演説”に隠された4つの工夫。
演説では専門用語や難しい言葉は使用せず
(1)声質の聞き取りやすさ 当日は進次郎氏以外の自民党の国会議員や地方議員なども演説したのだが、進次郎氏の声は他の議員よりも確実に聞き取りやすかった。それは、司会を務めた俳優出身の三原じゅん子議員と比べても遜色ないほどであった。ほぼ全員が現職議員のため(菅義偉元総理など一部の例外を除けば)誰もが滑舌はよく、音響設備などの条件は同じ。 これらを踏まえると、進次郎氏の生まれ持った声質そのものが聴衆にとって聞き心地がよいのだという結論に筆者は至った。同じように演説で人気を博した父親の小泉純一郎元総理から受け継いだ才能だろうか。 (2)聴衆が理解できない言葉は使わない 当日、筆者が撮影した360度カメラの映像を確認してわかったことだが、聴衆には10~20代の若者の姿も大勢集まったつものの、途中で退屈する様子は一切見られなかった。それは、演説中に専門用語や多くの人が知らない難しい言葉は一言も出てこず、話の内容を最後までしっかりと理解できたからだろう。現に、約12分の演説内容を筆者が改めて確認したところ、中学生以上であれば確実に理解できる言葉しか使われていなかった。 聞き手の理解力に大きなバラツキがある街頭演説会では、他党の政治家もこうした配慮を見習うべきではないだろうか。 (3)小難しい話はしない 加えて、単語自体は簡単であっても背景知識がないと理解できない話(政策の具体的な進め方や背景など)もゼロだった。要は、「〇〇を実現します!」という威勢のいい発言を連発する一方で、どのようにしてその〇〇を実現するのか、なぜ〇〇が今まで実現できなかったという小難しい話には基本的に触れないのだ。 これは、演説内容の中身が実は薄いことの裏返しでもある。
ポジティブな言葉が爽やかなイメージを醸成する
(4)ネガティブな感情は見せない 演説の最中、進次郎氏は一瞬たりとも怒りや不満といったネガティブな感情は見せず、特に他者(他党、対立候補)の悪口に繋がる内容は決して口にしなかった。しかも、ただポジティブな言葉を並べるのではなく、ポジティブに振る舞えるような演説の構成を始めから用意していた。 例えば公約の目玉である選択的夫婦別姓導入は、まさに自民党が長年にわたって実現を阻んできた政策だ。詳しく説明すればするほど、応援弁士として参加した菅義偉元総理を始め自民党の歴代内閣への批判に繋がりかねない。そのような諸刃の剣と言える公約を演説ではどのように話したのか。該当部分を以下に抜粋する。 進次郎氏:2つ目にやりたいこと。一人一人の人生の選択肢を増やしたい。私は、長年議論ばかりが続いて、答えを出さずに決着をつけられていない問題を片付けたい。だから選択的夫婦別姓という自民党の中で賛否が割れている問題も、私は国民の皆さんに問いたいと思いました。 「みんなが別姓じゃなければいけない」と言われたら、反対という気持ちは分かります。しかし、特に女性が仕事の面でさまざまな不便、さまざまな負担、そして子供の頃に親から付けてもらった名前を守りたい、選びたい。この「選びたい」という気持ちに対して新たな選択肢を日本の社会が持つことが本当に世の中にとって悪いことなんでしょうか。 私は選べる選択肢を増やしたい。そのために30年間議論を続けたことに答えを出していきます。そして、一人一人、人生はさまざまです。さまざまな人生にささまざまな選択肢を用意する。そんな政治、そんな社会を私はつくりたい。自民党が実質的に導入を阻んできた経緯については「長年議論ばかりが続いて」「決着をつけられていない」「自民党の中で賛否が割れている」と問題を矮小化して簡単に紹介。その一方、今後については「選択肢を増やす」「答えを出す」とやや抽象的ながらもポジティブな言葉を並べている。 進次郎氏は他の公約でも問題を放置してきた歴代内閣への批判に繋がりかねない場合は経緯説明を矮小化もしくは省略し、今後のきらびやかなイメージの説明に時間を割く傾向がある。このような構成の工夫によって、自然とポジティブな言葉が多くなり、爽やかなイメージの醸成にも繋げているのだろう。
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