ハンズに魅力発信拠点がOPEN!ブームの火付け役が語る「デザインマンホール」の魅力とは?
自治体の魅力や歴史に関するデザインが描かれているデザインマンホール。ポケモンやガンダムなど、人気キャラクターが描かれた特別なマンホールの登場や、デザインが掲載されたご当地カードの「マンホールカード」の流行によって、デザインマンホールの知名度は近年急上昇している。そんなデザインマンホールの魅力発信拠点として「HANDS マンホールベース 渋谷」が、2024年7月22日にハンズ渋谷店ニューオープン。今回は、デザインマンホールブームの仕掛け人で、HANDS マンホールベース 渋谷のプロデュースを担当した山田秀人さんに話を聞いてみた。 【写真】全国各地のデザインマンホールグッズが並ぶ ――今回の企画の狙いについて教えてください。 HANDS マンホールベース 渋谷のコンセプトは、「訪れたすべての人に日本のデザインマンホールはおもしろい!と感じてもらえる場所」です。 ご当地ものである日本のデザインマンホールは、現地に行くことでのみ入手できる「マンホールカード」の登場により、新たな観光コンテンツとして人気を高めてきました。一方で、ファン層がコレクターに偏重しているのではないかとも感じています。そのため、コレクターの方にもより楽しんでいただけることを前提に、幅広い層に魅力を伝える活動を2024年から始動しました。HANDS マンホールベース 渋谷は、その魅力発信拠点としての企画になります。 ――今回の企画の狙いについて教えてください。 HANDS マンホールベース 渋谷のシンボルは、道玄坂にある「ハチ公と人」が描かれたデザインマンホールです。このデザインマンホールは約40年前に道玄坂に設置されたものですが、デザインマンホールの魅力が凝縮されたデザインで、現在のブームにも大きな影響を与えていると言われています。 正面から眺めるとスクランブル交差点を歩くたくさんの人が、横から眺めると忠犬ハチ公をイメージした犬が描かれているように見える、だまし絵のようなデザインに加え、中央のプレートでDOGENSAKAを「DOG・EN・SAKA(犬に縁のある坂)」とオシャレに区切っている点も特徴的です。また、犬の中には2匹だけほかと違うデザインの犬が隠れていて、それを探す楽しみも入っています。 ――HANDS マンホールベース 渋谷の商品に関して、イチオシ、目玉となるものを教えてください。 イチオシは、「ハチ公と人」のシンボルマンホールを使ったHANDS マンホールベース 渋谷限定商品です。現在のラインナップとしてはTシャツ、トートバッグ、缶バッジ、実物サイズ凹凸ポスターなどがあります。 今後も商品の種類を増やしていく予定ですので、ご来場いただいたときには、ぜひ手に取っていただければと思います。また、今後訪れた人しか入手できないコレクションカードも導入していきますので、そちらもお楽しみにしてください! ――取り扱っているデザインマンホールの自治体数はどれぐらいですか? 日本のデザインマンホールは約1万2000種類と言われています。その中で、現在HANDS マンホールベース 渋谷では、約300デザイン約1000種類の商品を取り扱っています。 ――HANDS マンホールベース 渋谷がオープンしてからの反響はいかがでしょうか? オープンしてまだ1カ月(※取材時点)ですが、想定をはるかに上回るお客様にご来場いただいており、非常に驚いております。本当に感謝しかありません。 ――デザインマンホールを知らない読者の方に伝えたい魅力を教えてください。 実は、日本のデザインマンホールには「日本人らしさ」が込められています。デザインマンホールの一番大事な部分は、「安全性」です。いくらすてきなデザインでも、雨の日に滑ったり、転んだりすることはあってはなりません。そのため、表面デザインには全面に線を描き込むことで、どの方向から人が通過しても、一定の凹凸比を守り、平らな部分がないように工夫されています。雲が多く描かれたデザインや、水しぶきが派手に舞うデザインなどのマンホールには、このような背景があるのです。この条件の縛りが、よりデザインに統一感ある描き込まれた美しさを生んでいると思います。 また、マンホールは足で踏まれることが前提のものなのですが、色つきのマンホールは職人さんの手で1枚1枚色を付けられています。このような繊細さや丁寧さは、他国のマンホールにはあまり見られない魅力なのではないでしょうか。マンホールのデザインをアートな視点で見ていただけると、これまで気づかなかった魅力を感じていただけるのではないかと思います。 ――最後に読者に伝えたいことはありますか? これまでのデザインマンホールの広報では、下水道の「汚い」「臭い」などのイメージを変えることを強く意識してプロモーションしてきました。しかし、今後は「観光コンテンツ」のひとつとして、より幅広い層を意識し、コンテンツも増やしていかなければと思っています。普及のカギは、今までも、これからも、ずっと「おもしろい」と感じていただけるかどうかだと思っています。マンホールの魅力をテーマにした拠点である、HANDS マンホールベース 渋谷は、まだ試行錯誤の段階ではありますが、皆様に長く愛される場所となるよう努力してまいりますので、応援いただければ幸いです。 ■マンホール広報マンが語るマンホールカード制作秘話 今回のHANDS マンホールベース 渋谷に対する熱い想いを語った「マンホール広報マン」の山田秀人さん。10年にわたるデザインマンホールの広報活動は苦難の道乗りだったという。 ■デザインマンホールの魅力 山田さんにとってデザインマンホールの一番の魅力は「統一感」にあるという。デザインマンホールには、直径60センチという限られたサイズの中でも、自治体の推しが詰め込まれている。どこでもある全国統一のフレームのマンホールなのに、デザインによって歴史や趣を感じることができるという奥深さがあるのだ。しかし、一番の魅力であった「統一感」は、宣伝においては乗り越えるべき壁として山田さんの前に立ちはだかった。 ■今では人気観光資源のマンホールカードの誕生 「『統一感』の魅力を引き出すには種類が必要でした。」と語る山田さん。型が必要なものは製造コストが高く、複数の種類を作るのが大変。しかも、安価に作ることができないと、手軽に集めてもらえるグッズにはならない。これらの問題に対する解決策として、「マンホールカード」が初めてグッズ化された。山田さんが「安価で複数種類を製造でき、広告費でチラシの代わりに制作し配布できるアイテム」として注目したマンホールカードは、現在では第23弾まで発行されている人気コンテンツになっている。しかし、自治体の理解が得られるようになるまで、多くの努力があったという。 ■山田さんの情熱が自治体を動かした! 当時、同様のご当地コレクションカードはダムカードしかなく、ダムカードはダムで配っていたのだが、カード配布に自治体の許可の必要はなかった。一方で、マンホールカードは、各自治体が管理するマンホールがテーマで、配布場所も自治体の庁舎や観光案内所などになるため、配布を実現するには各自治体の許可が必要だった。この難題をクリアしたのは、山田さんのデザインマンホールへの愛と情熱であった。当時を振り返り、山田さんは以下のように語った。 「クリアできたのはシンプルに『情熱』です。急がば回れではないですが、結局、1件1件自治体に足を運び、直接会って趣旨を説明しなければ許可をいただけないので、これが最善と考えました。採用後には、各自治体が自分ごととして積極的にPRをしてくれるようになったので、この動きが現在のデザインマンホールブームに大きく影響を与えていると思います」 全国各地、自治体ごとに異なるデザインで工夫がなされている個性豊かなデザインマンホール。観光資源としても盛り上がりを見せるデザインマンホールブームは、HANDS マンホールベース 渋谷の登場によりさらに加速していくことだろう。 ただのマンホールでも、デザインに目を向ければそれはまるで足元に広がる美術品。忙しい日々でも、ふと立ち止まってデザインマンホールの世界に思いを馳せてみてはいかがだろうか? 文=平岡大和