「看取りしか選択肢はない」医者から告げられた女性 あの日の笑顔を呼び起こす「ステーキ」
【鈴木孝悦さん】「ご夫婦で一緒にステーキを食べに行った思い出とかあると思うんですよ。それをご自宅で楽しんで頂けるんであれば、私たち食に関わる者としては、一番うれしいことかなと思います」 5年前、「口から食べることはできない」と医者から告げられた仲秀子さんの元にもステーキが届けられました。
【夫・良二さん】「妻にとっては、牛肉なんてもう何十年ぶりってなイメージでしょうね。今回食べるのは」 「あんまり表情が出なくなったんですけれども、普段食べて笑いませんけど、ステーキを食べて笑うと面白いなと思っております」
2人の思い出を再現したいと、鈴木さんは良二さんのステーキも準備しました。 【言語聴覚士・高田耕平さん】「ステーキの見た目は同じですけど、柔らかさが違うんです」 【夫・良二さん】「食べれるんやで(笑)」
ステーキを食べ始めるとしきりに皿を押す秀子さん。 【高田耕平さん】「お皿を手で押すのはリクエストです」 「嫌な時だと、口に食べ物を入れようとしたら、口を閉じるんです。『もういらない』っていう意味なんですけど、秀子さんが皿を押した後、ステーキを口元に持っていくとパカッて口を開いてずっと食べておられるんで、『ステーキをもっとちょうだい』っていう意識でおっしゃっています」
お皿をのぞき込む秀子さん。 【高田耕平さん】「めっちゃチェックされてる。めっちゃさっきから器をのぞきこまれるんです。『ステーキ入ってんねやろな』っていう」 「わかっとります。ちょっとお待ちください(笑)」 【夫・良二さん】「ふふふふふ(笑)」 良二さんが笑うと、普段食事の際に笑顔を見せないという秀子さんの表情もほころびました。
【夫・良二さん】「ほんとに信じられないですよね、妻が、自分と同じものを口にしているというのは。それはサプライズですよね」 「家族で食事ができたらということが再現できたということですよね」 「いやぁ、妻がこの状態になってからね、同じステーキをこうして目の前で食べるなんてね、想像できなかったんで、ほんとびっくりしましたよね」
「これは一番生活のレベルとしては大事なことですよね。こうして同じものを食べられるというのはね。やっぱり美味しいものを食べることは、一番の大事なところですよね。生命の維持と欲とが両立できるというのは(笑)」 「ふつう笑わないからね妻は。ほんとにめったにね。ともに嬉しく思いましたですね」 あの日の笑顔を呼び起こす。 お肉があります。 (関西テレビ記者・井上真一)
関西テレビ
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