いつまでも作り続けてほしいスポーツカーの筆頭、マツダ・ロードスターはなぜこんなにも魅力的か
スポーツカーのデザインはむずかしいのか簡単なのか。私個人的にはけっこう考えさせられるテーマだと思っている。少なくともマツダ・ロードスターのデザインは古びてみえない。 【写真多数】デザインが古びて見えないマツダ・ロードスターの全体像
現行ND型のデビューは2015年。いまの量産車のなかではかなり長寿だ(マツダ車はけっこう長寿)。2023年10月にマイナーチェンジを受けた最新モデルが、24年1月に発売された。 スポーツカーのデザインに公式はないけれど、概して言われているのは、2人乗りで、オープンで(かつソフトトップで)、地面に張り付くように車高が低くて、タイヤの存在感が大きい、ってことだろうか。
エンジンがフロントならフードが長く見えたほうがカッコいいし、乗員がいるキャビン背後にエンジンが搭載されるなら、さらにノーズは低くて、前後に圧縮感があったほうがいい。駆動方式は後輪駆動がベスト、というひとも多い。 マツダ・ロードスターは、上記の条件をかなり高得点でクリアしている。2人乗りで、車高は低めで、ノーズが長く見え、乗ればエンジンの存在感が大きいし、マニュアル変速機がちゃんと用意されている。 ソフトトップで、しかも黒色が標準、というのも私が気に入っている点だ。ちょっと私見が入るけれど、ロードスターと呼ばれるクルマは本来無蓋(屋根なし)だった。幌が黒色なのは、英国の紳士傘と同じで、本来あってはいけないもの、だからだ。英国紳士は雨に濡れるのも厭わない。そこで幌も傘も、歌舞伎の黒子と同じ。 ロードスターをドライブした印象は、ここでも、スポーツカーの楽しさが凝縮されている、というもの。よけいな引き算も足し算もない、シンプルなドライビング感覚が変わらず気持ちよい。
今回どこが変わったかというと、レーダークルーズコントロールと後退時検知機能のスマートブレーキサポートが新採用されたことや、インフォテイメントシステムのディスプレイが8.8インチとすこし大型化したこと。マツダコネクトも最新のOS(マツダ車のなかで最新)になった。 デザイン上は、前後の灯火類がすべてのモデルでLEDとなり意匠も変更。「目元にスポーティな軽快さを与えた」とマツダではしている。さらに、Penの読者向けには、スポーツタン(ベージュ系)内装と同系色のソフトトップを持つ「SレザーパッケージVセレクション」が設定されたこともニュースでは。 なぜこんなふうな変更が、というと、背景にはサイバーセキュリティ基本法(サイバーセキュリティ法規UN-R155)なる新法規がある。WiFiによるOTA(Over The Air=通信によるシステムのアップグレード機能)搭載車が対象で、車載コンピューターのハッキングを防止するべく、国連欧州経済委員会が導入したものだ。日本もそれにならっている。 ロードスターも、発表いらいコンピューターシステムは継続使用だったので、新規制に準じる必要があり、それならばこのタイミングで、と手を入れることになったそう。