いつまでも作り続けてほしいスポーツカーの筆頭、マツダ・ロードスターはなぜこんなにも魅力的か
変更点は、走りに関する部分にも及ぶ。ステアリングシステムの構造変更でドライバーとクルマの「高い一体感を目指し」たというのが一つ。2リッターエンジン(電動格納トップのRF)は駆動力制御に最新の制御ロジック導入で、アクセルペダルの微妙なオンオフに対するエンジンレスポンスがよくなっている。 1.5リッターエンジン(オープンのロードスター)は、日本国内のハイオクガソリンに合わせたセッティングが、今回初めて施された。おかげで「加速の伸び感が強化され」たとマツダ。 これまでロードスターは98RONというオクタン価のハイオク使用が前提だったが、いまの日本ではほぼRON100。なにも低いほうに合わせる必要ない、と判断したと開発者は言う。最高出力は3kW上がっている。
さきに、ロードスターは黒幌でなくちゃ、と書いたものの、今回新設定された「ロードスターSレザーパッケージVセレクション」といって、ベージュ系のレザーシートに、ベージュ幌の仕様は、発売直後から高い人気を呼んでいるそうだ。初代に設定されていたVスペシャルの再来ともいえるモデルだ。 今回のVセレクションではブラックの外板色とベージュのシートや幌との組み合わせがウケていると聞くけれど、試乗したレッドもよい。とくにドアの内張りのパネルまでボディ同色で、ベージュ内装との組合せがたいへん美しい。
私が乗ったのは、1.5リッターも2リッターも、マニュアル変速機モデル。2リッターは、マツダの開発者の狙いどおり、市街地での中間加速の領域がさらに扱いやすくなっているのと、加速時の音がきれいにチューニングされたのが印象的だ。 2リッターエンジンのばあい、電動格納式トップのボディとなるけれど、日本では逆にそのほうが使いやすい、とあえて選ぶひとも少なくないだろう。
いっぽう、1.5リッターは高回転まで気持ちよく回るエンジンで、手首だけで操作できるシフトレバーを操って走ると、MT最高!と思わず声が出そうになる。 ベースモデルのロードスターSも軽快で、個人的にはたいへん好ましいクルマだけれど、それより上のモデル(つまりほぼすべて)には、「アシンメトリックLSD」なる新しい差動装置が備わり、とくに下り坂のカーブを走りぬけていくとき、後輪にしっかり駆動力がかかるようになっている。 各種規制によって、いつまで現行モデルの生産が続けられるかわからないが、今回のサイバーセキュリティ法を”逆手”にとったようなマイナーチェンジを好例として、これからも期待したい。マツダでも「出来るだけ作り続けたい!」と大きな声(比喩)で言っている。がんばれ。
文、写真:小川フミオ