JR目黒駅で「目黒とメグロの回顧展」開催…でも実は「荏原製作所」と名乗りたかった!? 目黒製作所の歴史を改めて紐解く
目黒製作所創業から100周年を記念した特別なイベント
戦後の国内は運搬需要が年ごとに増えていく復興期に入り、その後10年間ほどは二輪車のラインナップ拡大と共にメグロ製オートバイの全盛期を迎えた。機種の展開も、戦後はまず500ccの戦前モデルの再生産から始まったが、1951(昭和26)年に250ccのジュニア号が発売されると大ヒットし、その年だけでも総出荷数が2.6倍に拡大。その後もラインナップを増やしながら昭和30年頃までは業績の拡大が続いた。 しかし昭和30年代に入りホンダ、ヤマハ、スズキといったメーカーが、徐々に新機軸の小型モーターサイクルを発売した結果、国内市場の勢力図は激変。戦前に独自で作り上げた二輪車を原型に、新型車を加えてラインナップを作り上げてきた目黒製作所はその流れに乗れず、下降線をたどり始める。その結果、1960(昭和35)年末には、川崎航空機工業との業務提携を行い、1964(昭和39)年末には、40年続いた目黒製作所が幕を下ろすこととなった。 しかし、2021年にはカワサキが発表したカワサキMEGURO K3によってメグロのブランドが復活。そして第2弾として250cc版のカワサキMEGURO S1が間もなく発売予定となっている。さらに2024年は目黒製作所誕生から100年の節目を迎えて大きな盛り上がりを見せており、JR東日本とコラボレーションしたJR目黒駅での「目黒とメグロの回顧展」も開催。その模様と目黒製作所があった現在の同地の様子は写真をご覧いただきたいが、今年は日本の二輪車史に大きな足跡を残した目黒製作所と「メグロ」のブランドを改めて評価し、末永く大切にしてゆくことを考える新たな機会になるだろう。 (写真説明:画像ギャラリーと連携) ■JR目黒駅催事スペースで9月1日から同月30日まで開催中の「目黒とメグロの回顧展」を取材のためJR山手線目黒駅に着くと、改札には大きなバナーが! 駅のコンコースにもポスターが張られていた。JRと二輪車のコラボイベントというのは新鮮だ。 ■「目黒とメグロの回顧展」の様子。初日は熱心なメグロファンが数多く来場し、遠くは山梨県の甲府からJRで駆け付けた60年代のメグロに乗る女性ライダーの姿も! 写真右側は、会場限定のメグログッズを買う人の列で大盛況だった。 ■美しく作られた回顧展の内部。段上には新旧4台のメグロ製の二輪車と興味深い歴史パネルが設置され、ちょっとしたミニ博物館のよう。今回の展示では、特に若い観覧者が興味を持って見ている姿が散見され印象的だった。 ■メグロの戦後モデルは生産再開と共に、皇紀を示す二桁の数字をなくし、「Z型」と名前を変え生産された。この展示車のプレートには戦前型の「Z97型」と書かれているものの、実車は1950(昭和25)年に目黒製作所本社工場から出荷されたメグロ500Z型。戦前型と同仕様であることから、メグロ初の完成市販車の代表として展示された。手前のナンバープレートは、この実車が昨年公開の映画「ゴジラ-1.0」の劇中で登場した際に取付けられていた物。 ■目黒製作所初の二輪完成車は、当時スイスのモトサコシ製を模した単気筒エンジンをイギリスのベロセットを参考にしたフレームに搭載したもので、ボア・ストローク82×94mmの498ccに自社製3速ギヤボックスを装備。排気は2ポートで車体左右にマフラーを配しているのも特徴。こうした最旧型メグロの実動現存車は歴史的にも極めて貴重。 ■会場には市販予定となっているカワサキMEGURO S1が展示され注目を集めていた。これはカワサキMEGURO K3に次ぐブランド復活の2機種目だが、歴史的に見れば1964(昭和35)年発売のカワサキ250メグロSGから60年振りの250ccクラスのメグロとなる。伝統のメグロ風デザインが現在のユーザーにどう受け入れられるか期待も大きい。 レポート&写真●上屋 博 取材協力●村田昭男氏、佐藤典子氏