ディズニーが日韓コンテンツに全力を懸ける理由、『SHOGUN 将軍』に続くヒットは生まれるか
黒字転換には、傘下の別の動画配信サービス「Hulu」とのバンドル(組み合わせ)販売や広告収入の増加、コスト削減など複数の要因がある。ただ、今後も市場から動画配信の収益性が厳しく問われるのは間違いない。 収益性を重視する姿勢は発表会にも表れていた。前回の発表会ではアジア各国で制作された作品が紹介されたが、今回は日韓の独自作品に絞った。投資の「選択と集中」をした結果といえるかもしれない。 黒字化したとはいえ、9月末のディズニープラスの会員数は1億5860万人にとどまる。2億8272万人のネットフリックスの背中は遠い。
ネットフリックスの会員数を地域別に見ると、アジア地域は5260万人だが、1年間の伸び率は約24%増と、最も伸びたエリアだった。ディズニーの動画配信事業にとっても、アジアでの成長は欠かせない。 「オーセンティシティ」。今回の発表で、ディズニー幹部からこの言葉をよく聞いた。「本物志向」と訳されることの多いこの言葉は、ディズニー社内では『SHOGUN 将軍』を表現するときによく使われている。 同作品はアメリカの制作ながら、日本人のキャストが中心で、セリフの7割が日本語だった。公表されていないが、1話あたりの制作費はハリウッドで制作されるドラマよりも高額だったといわれている。
ルーク氏はアジアにおける日韓コンテンツの制作を「リスクをとって進める」と語る。ディズニーから本物志向の作品がどれだけ増えるのか。そして、それがどれだけの会員増につながるのか。今後、ディズニーの真の実力が問われそうだ。
並木 厚憲 :東洋経済 記者