問題発言議員に決死のネガティブキャンペーン
電動車イスごとひっくり返される
もとより県側は、池に柵などを設置せず、安全管理に落ち度があったことを全面的に認めている。つまり井上の言うように「子どもに過失のある場合」ではなかった。 しかも賠償金は、日本学校安全会からの死亡見舞金が1200万円、県からはその三分の一の360万円しか支払われないことになっていた。井上の発言は、障害児の命が賠償金を支払うに値しないものであることを露骨に示していた。発言を報じる前出の記事には、いずれも「差別発言」という見出しが付けられていた。 生きていても国の世話になるだけ――そう言い切る議員に、一貫して優生思想に反対し続けてきた青い芝が黙っているわけがなかった。 新聞報道があった二日後、兵庫青い芝は自民党兵庫県連に抗議文を手渡し、二週間後にその回答を要求した。県連側は、発言は井上個人によるものと逃げたため、兵庫青い芝は井上に面会を求め続けた。井上とは一度、会うことができたが、差別発言はしていないと居直った上、「今度来たら、警察の手を借りて排除するぞ」と脅した。 業を煮やした青い芝のメンバー数人は、11月半ば、謝罪を求めて県連事務所で座り込み闘争を決行する。福永がその時の情況を語る。 「階段を上がって二階の事務所に行ったら『何や、お前ら?』いう感じの対応やった。『井上を出せー、出さんかい!』言うたら、『今日は来てない』と。そしたらすぐに警察を呼ばれて、機動隊員に電動車イスを抱えられて1階に降ろされた。降りたら、電動車イスごとカメみたいにひっくり返されて、タイヤが真上になった。わしはうまい具合にケガせんように落っこった」 当日、福永の介護に入っていた広瀬正明がその時の様子について語る。 「機動隊が来たら逃げるように言われてたんで、介護者はみんな建物から離れた。20分くらい経ってからかなあ、現場に戻ったら福永さんの電動車イスが完璧にひっくり返されとってん。福永さんも仰向けになっとったから元に戻したけど、あれは故意に倒してたと思う、確実に。びっくりしたで。機動隊も無茶しよるなあと思たもん」 さいわい福永にケガはなかった。議員の後ろ盾があるから、少々手荒な事をしてもかまわないと考えていたとしか思えない機動隊の行動であった。