飲食店で倒れた40代男性が、身元不明の遺体になってしまった理由とは 1年以上たっても「法的には生きたまま」、無人の空き家に近隣住民は困惑
昨年6月、40代の男性が京都市内のファストフード店で突然倒れ、病院に運ばれて死亡した。スマートフォンや財布を身につけていたにもかかわらず、身元不明で引き取り手のいない遺体「行旅死亡人」として火葬されてしまった。 【写真】現金3400万円を残して孤独死した身元不明の女性、一体誰なのか(前編) 「行旅死亡人」のミステリーを追う
死亡記事を載せた官報には「推定」として、名前も住所も記載されている。なぜ、身元不明の遺体とされてしまったのか?疑問を感じ、男性が住んでいたとされる住所地を訪れた。すると、法的には存命扱いのままで、空き家となった自宅へ郵便物が届き続けるなど、地元住民も困惑する不可解な状況が見えてきた。(共同通信=武田惇志) ▽驚く住民「え、亡くなった!?」 男性は昨年6月11日、京都市右京区内のファストフード店で倒れ、病院へ救急搬送された。約1週間後の6月19日午後、京都市東山区内の病院で死亡した。死因は脳出血だった。 今年1月9日の官報によると、男性の本籍は不詳で、死亡時の推定年齢は46歳だった。体格は大柄。スマートフォン1台、時計1個、鍵4本、キャッシュカード1枚、ポイントカード16枚、診察券2枚、図書カード3枚、テレホンカード1枚、バスカード1枚、財布1個、現金5万1893円…。これだけ多くのものを身につけていた。
官報には「身元不明のまま遺体は火葬し、遺骨は京都市深草墓園に納骨。心当たりの方は当(東山)区役所まで申し出てください」とある。 官報に記された京都市西京区の男性の住居を1月下旬、訪ねた。古風な家々が立ち並ぶ閑静な地区の一角で、風光明媚な観光地として知られる嵐山もほど近い。 自宅は木造瓦ぶきの2階建てで、門柱の色は黒くくすんでいた。登記簿によると、築40年が経過。庭には植木が置かれ、生活感が漂う。しかし、インターホンを押しても応答はなかった。 誰か事情を知っている人はいないのだろうか。周囲で聞き込みを始めると、近くに住む女性がインターホン越しに応答してくれた。 「男性が身元不明で亡くなった経緯について調べているのですが」と記者が伝えると、女性は驚いた様子で、こう口走った。「え、亡くなった!?実は、本当に困っていまして…」 ▽地元住民の困惑 詳しく話を聞くと、地元住民らは半年間、男性が入院したままだと思っていたという。