生成AIは創作者の仕事を奪うのか? 脚本家や漫画家、編集者の場合
漫画家アシスタントの仕事は奪われるのか
小沢氏によれば、漫画創作プロセスにおいては、背景描画ほか、(うめとしては使用していないが)キャラクターの下書き、ペン入れのアシストも生成AIには可能である。いわゆる「アシスタントさん」の役割の一部だ。また、生成AIがブレストの相手となったり、アイデアのヒントを与えてくれたりもしてくれる(前回記事)。これは編集者的な役割の一部だ。 であれば、生成AIの普及と進化によって、アシスタント職や編集職の仕事は奪われてしまうのだろうか? しかし小沢氏の答えはNOだ。理由は、現在の日本の漫画業界においては、両方とも人出が足りていないから。 「アシスタントって、師事している先生から技術を盗んだりといった徒弟制の名残りですが、漫画家としてデビューするためのチャンスを得るためにやる側面も大いにありました。出入りしてる編集さんに、自分の原稿を見てもらえたりするので」(小沢氏) かつて漫画というものは、雑誌に載せるしか発表の場がなかった。だから雑誌編集者とのコネクションが作れるアシスタントという仕事は意味があったのだ。 「ですが、今はWebでいくらでも作品を発表できる。そこで編集者の目に止まれば即デビューの道も開ける。わざわざ“先生”につく必要はありません」(小沢氏) 古くからある出版社への持ち込みが変化したことも大きい。 「昔は電話を取った編集部の人がたまたま見る、みたいな“ガチャ”状態でしたが、今では編集部に送ればちゃんといろいろな人の目に触れるシステムが多くの出版社で組まれています。つまり、昔みたいにアシスタントで長く下積みをしなくてもデビューできる道が増えました」(小沢氏) 結果、専業アシスタント自体が減っているという。優秀なアシスタントはどの漫画家も手放さない。時給もどんどん上がっている。 「今のところ、生成AIが普及したから君クビねというふうにはなりませんね。うちだって絶対手放したくありません。いいアシスタントさんは最高の宝ですよ(笑)」(小沢氏)