ロングボールからパスサッカーへ スタートダッシュに失敗したオーストラリア代表の今
かつてはロングボール戦術を取り入れていたオーストラリア
オーストラリア代表は新指揮官の元で調子を取り戻せるのか。 9月から始まったワールドカップアジア3次予選(最終予選)。日本は中国、バーレーンに大勝し、いいスタートダッシュを切った一方、グループのライバルであるオーストラリアは初戦のバーレーンに敗戦、続くインドネシア戦は引き分けと躓いた。この結果を踏まえ、先日には指揮官のグラハム・アーノルド監督が辞任。新たにトニー・ポポヴィッチが就任した。 ポポヴィッチ監督は就任会見にてこの直近2試合を振り返り、「チームは少し平坦に見えたかもしれない。試合ではそういうこともある。もう少しダイナミックになれるかもしれないし、もっと素早くボールを動かせるかもしれない。これらは彼らがやっていたことで、多くの成功をもたらしていた。でも、ここ2試合はその証拠があまりなかった。それを取り戻し、さらに良い形で前進できると確信している」とコメント。チームがより良くできる部分をすぐに洗い出したという。 今回の予選で苦しんでいるオーストラリア。オーストラリアといえば、以前はロングボールを適用した戦術が有名だった。前線にティム・ケイヒルをはじめ、ハリー・キューウェル、マーク・ヴィドゥカといった大型の選手や空中戦に強い選手が並び、ロングボールからチャンスを生み出す古きイングランドのスタイルが印象的だった。実際日本も2006年のワールドカップ・ドイツ大会でこのオーストラリアに苦戦し、当時の日本からすればオーストラリアは苦手意識がある相手だった。 しかし2010年以降、これまでのロングボールの戦術からボールをつなぐパスサッカーへと変貌した。これは当時代表を率いていた現トッテナム指揮官のアンジェ・ポステコグルーの影響によるもので、ポステコグルーは自国リーグのブリスベン・ロアーを率いていた際に、繋ぐサッカーで数々のタイトルを獲得していた。これらの手法を代表に持ち込み、これまでのスタイルを変えたことが要因とされている。オーストラリアがなぜロングボールからパスサッカーへ変わったのか。ファンやサポーターがこれまでの戦い方に魅力を感じなくなったこと、ストロングポイントであった体格戦、空中戦で勝てる選手がいなくなったなど様々な話があるが、世界と戦っていく上でこれまでの戦い方よりも繋ぐサッカーの方が未来があると踏んでのことだろう。実際2015年の自国開催のアジアカップではその戦い方で優勝しており、国内から高い評価を受けたという。 パスサッカーが主体となって以降、日本はオーストラリアに1度たりとも敗戦しておらず、苦手な相手から逆に相性の良い相手となっている。予選でも過去2大会オーストラリアはプレイオフに回っており、ここ最近はアジアでも苦戦している。パスサッカーといえどスペインのようなレベルではなく、全体的に緩いパスサッカーであり、組織的に守れるチームからしたら守りやすいというのもあるだろう。ここを改善できるかどうかで、今後の試合にも影響があるのではないだろうか。 今後の日程を見ると、10月に日本、11月にサウジアラビアと山場が待っている。ここで再び躓けば、ワールドカップ出場に向けて黄色信号どころか赤信号が点滅する可能性がある。最低でもプレイオフ圏内は絶対に確保したいところだが果たしてここから波に乗れるのか。
構成/ザ・ワールド編集部