東京農大一中|部員のほとんどが未経験者、感じてもらいたい「野球の面白さ」
中学軟式野球の部員数が激減している時代にあって、中学から野球を始める生徒が多い東京農業大学第一高等学校中等部(東京都世田谷区)の軟式野球部。前回の『野球未経験の子達を付属高校野球部へ送り出す、重大な役割担う東農大一中軟式野球部』の後篇として、監督を務める寶田浩太郎先生にお話を聞きました。 【動画】全員ピッチャーになろう!「全員ピッチャードリル」 【高校でも野球をやりたいという子を育てたい】 ――チームの活動日から教えてください。 各部活の活動日は週5日までと決まっていて野球部は火、水が休みです。練習時間は平日は15:30―17:00で最終下校が17:30。土曜は13:30―17:00まで、日曜は午前か午後に練習か練習試合を行っています。 ――東農大一中野球部にはどういった子が入ってきているのでしょうか? 現在は中学受験で入ってきた生徒ですが、来年度(2025年度)からは付属の小学校から内部進学してきた生徒も加わります。中学受験をした生徒は、受験のために小学校の途中で少年野球を辞めたという子が多いですね。 ――チームの指導方針は? 生徒主体ということを意識しています。部活動の目的としては人間形成というところが主体なので、凡事徹底ではないですけど挨拶や返事など、当たり前にやって欲しい部分の指導は意識的にやっています。 あとは、付属の東京農業大学第一高校への入学が中学からの内部進学のみという中高完全一貫になりますので、高校でも野球をやりたいという子を育てたいと思っています。 ――中高完全一貫になるということは、この子達が高校で野球を続けてくれないと高校の野球部員がどんどん減ってしまうことになりますが、彼等に高校でも続けてもらうために意識していることなどはありますか? 彼等に「野球の面白さ」を感じてもらうことを意識しています。「学校がない土日に練習に行くのはいやだなぁ」とか、そういう気持ちにさせないことが大事だと思いますし、そのためには野球技術の上達は必ず必要だと思っています。ですから技術的な指導をしっかりやらないといけないと思っています。あとは、この子達が決めた今年の目標が『世田谷区で優勝する』なのですが、野球を通じて目標を達成できた喜びとか、できなかったことができるようになる楽しさ、そういったことを経験させることも大事かなと思っています。 【チームスポーツでもあり個人スポーツでもあるところに野球の楽しさ、面白さがある】 ――令和の時代に中学生を指導する難しさを感じることはありますか? 情報が多い社会で、彼等の興味関心の幅が昔に比べて広くなっていて、その中から野球を選んでもらうきっかけを作ることが一番難しいと思います。野球部に入ってきてくれさえすれば野球の楽しさを伝えることはできるのですが、その入口をどう作ってあげるかというところが難しいと感じています。 ――今の年代の中学生たちの良いところ、ちょっともの足らないと思うところなどはありますか? 正解があるものに関しては、そこからズレないようにやることは得意というか上手いと思います。反面、正解のないものがちょっと苦手というか、どこから思考していけばいいのか、やり出す、動き出すまでに時間がかかってしまうことが多いと感じています。さっきもありましたけど、外部コーチからの指導が終わって部活の終了時間までちょっと時間が空きましたよね? でも動き出すまでに時間がかかってしまっていました。それはやっぱり普段から選択肢が与えられていてその中から選ぶという習慣がついているからだと思うんです。自分から何かを得るために動くという機会が少ないなかで育っているからなのかなと感じています。 ――チームの課題はどんなところにありますか? これは私立中学特有なのかもしれないですが、どの代でもチーム一丸になることに対して課題を感じています。公立中学だと小学校時代から一緒で、同じ町内に住んでいて、同じ方向に帰って行ってというように一緒に過ごす時間が長いから中学の部活でも一丸になることは自然なことだと思うんです。でもこの子達はほとんどが中学で初めて知り合って、住んでいる町も帰る方向もバラバラなので、一緒の時間を過ごす時間が少ない。そういう部分で繋がっている感というか、チーム一丸になることに毎年苦労しています。 ――野球人口が減っていると言われていますが、野球をやったことがない人達に「野球の面白さ」を伝えるとしたら、どんなふうに伝えますか? 誰かの成功を自分の成功のように喜ぶことができますし、チームスポーツではありながら個人プレーの連続なので、自分の上達具合やパフォーマンスが結果として分かりやすく出やすい。それが勝利に繋がると嬉しいですよね。あとは失敗しても仲間が助けてくれたり、仲間の失敗を今度は自分がカバーしてあげたりできることですね。チームスポーツでもあり個人スポーツでもあるところに野球の楽しさ、面白さがあると思います。(取材・写真/永松欣也)  
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