脇の下のトラブル「ワキガ」と「多汗症」どっち? 診断基準や対処法を医師が解説!
ワキガと多汗症の違い
編集部: ワキガも多汗症も、どちらも脇の下のトラブルですが、症状が違うのですね。 鴫原先生: はい。厳密に言うと、ワキガと多汗症では仕組みが異なります。ワキガはアポクリン腺から出る汗が菌などと結びついてにおいを発します。しかし、多汗症の場合には、エクリン腺から大量の汗が出ます。 編集部: アポクリン腺とエクリン腺には、どのような違いがあるのですか? 鴫原先生: 人間の汗腺にはアポクリン腺とエクリン腺の2種類があり、エクリン腺はほぼ全身に存在し、気温や精神的な緊張によって汗をかきます。その一方、アポクリン腺は主に脇の下にあり、性ホルモンの影響などで分泌が盛んになります。 編集部: エクリン腺から出る汗には、においはないのですか? 鴫原先生: はい。エクリン腺から出る汗はサラサラしており、基本的に無臭です。ただし、時間が経過すると汗臭くなっていきます。エクリン腺から出る汗がにおうのか、それともアポクリン腺から出る汗がにおうのかは、においの出る場所を探してみるといいと思います。もし、脇からにおうならアポクリン腺、全身からにおうならエクリン腺から汗をかいていると判断していいでしょう。 編集部: ワキガと多汗症は、どのようにして診断するのですか? 鴫原先生: まずは問診により、どのようなときに汗をかくか、どんなときに症状が気になるかなどを詳しく確認します。また、医師がワキや汗の状態を目で確認する視診もおこないます。加えて、多汗症の重症度を調べるために、発汗量の測定をおこなうこともあります。ワキガの場合は、自覚症状がないことも多いので、脇にガーゼを挟んでいただいてにおいを確認するなど、他覚症状によって診断することもあります。
ワキガと多汗症の治療法・予防法
編集部: ワキガや多汗症は、治療することができるのですか? 鴫原先生: どちらも医療機関で治療することが可能です。ワキガの場合は、まず不規則な生活習慣や喫煙の習慣を改善するなど、生活習慣の見直しが必要です。そのほか、脇毛を処理したり、市販の制汗剤を使ったりするほか、医療用のボツリヌス毒素の局所注射や塩化アルミニウム溶液の塗布をおこなうことがあります。 編集部: ほかにも、ワキガの治療法はありますか? 鴫原先生: ワキガの原因となるアポクリン腺を手術で切除する方法もあります。さらに最近では、マイクロ波を照射してアポクリン腺を破壊する治療法もあり、高い効果を得ています。 編集部: どのように、多汗症を治療するのでしょうか? 鴫原先生: ワキガと同じく、医療用のボツリヌス毒素の局所注射や塩化アルミニウム溶液の外用をおこなうことがあります。また、近年は新しいタイプの治療薬が開発されており、拭き取りタイプの薬や塗り薬なども選択できるようになっています。そのほか、手術による交感神経の切除などをおこなうこともあります。ただし、これらの治療は効果が一時的であったり、副作用がみられたりすることもあるため、ワキガ治療同様、マイクロ波を照射して汗腺を破壊する治療をおこなう医療機関も増えています。 編集部: どちらも自分で予防することができるのですか? 鴫原先生: 例えば、汗をこまめに拭き取ることは、においの原因となる雑菌の繁殖を防ぐのに有効です。スパイスの多い食べ物や辛い食べ物は発汗を促す作用があるので、食べすぎないようにしましょう。また、通気性がよく、蒸れにくい素材の衣服を身につけることも、ワキガや多汗症の予防には有効です。ただし、これらのセルフケアは、症状を軽減することはあっても治すことはできません。完全に治したい場合には、医療機関での治療を検討しましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 鴫原先生: ワキガも多汗症も、年代問わずに悩んでいる人が多い疾患です。特に多汗症の場合、ストレスが大きく関係していることから、「社会人になって急に多汗症になった」「対人関係のストレスで突然、大量に汗をかくようになった」という人も少なくありません。ワキガや多汗症は、命に関わるような重大な疾患ではありません。しかし、精神的なストレスにつながることもあり、場合によっては仕事やプライベートに支障が生じ得ます。悩んでいる場合は、ぜひ医療機関にご相談ください。