軽井沢で「マナーなき新参者」が急増 森からムササビが消えた…高級別荘地で何が起きているのか
単なる紳士協定だった
「原則」や「やむを得ない場合」といった表現が生んだ光害問題。この他にも要綱には「望ましい」「できる限り」といった曖昧な記述が数多く見受けられる。各々が好きに解釈することができ、それが「すり抜け」の大きな一因となっている。 そもそも要綱は、議会を通して制定される条例とは異なり、違反しても罰則がなく、指導に従わせる強制力も持たない。また、必ず違反者を指導しなければならないという義務もないので、なぜ「指導しない」のかの説明義務も生じない。「決まり」としては何とも心許ない制度なのである。 軽井沢の自然や文化を守る活動をしている「軽井沢文化協会」の会員はこう肩を落とす。 「最近、新しく町に参入する人や企業は、これまで綿々と町が守ってきた軽井沢の自然環境や文化に全く興味がなく、要綱を守らなくても法律違反にはならないと開き直るケースが多い。違反者が増えたせいで、要綱は取り締まる術を持たない単なる紳士協定だということが明るみに出てしまいました」
「ホテルを建てる」はずが…
要綱の体たらくを象徴するケースとして耳目を集めているのが、旧軽井沢に建設中の「グランディスタイルホテル&リゾート旧軽井沢」である。軽井沢の中心地・旧軽井沢銀座通りに建築中の分譲ホテルコンドミニアムで、建設は東急不動産ほか。管理会社はうどん店「つるとんたん」を経営するカトープレジャーのグループ企業だ。2025年夏の売り出しを予定しているが……。 「当初、東急不動産は“ホテル”だと説明していました。ところが、沖縄や箱根で“ホテルコンドミニアム”という投資型マンションを売り出しており、この建物もそれにあたるのではないかと周辺住民から声が上がったのです。これはリゾートマンションを兼ねつつ、使わないときはホテルとして貸し出す性質のもの。結果、後から“ホテルコンドミニアム”であることが分かり、景観への影響も問題視されたこともあって、昨年、ネット署名も行われました」(周辺住民) 自然保護対策要綱では、コンドミニアムやマンション等、分譲目的の集合住宅は1棟に19戸までしか建てられないと決まっている。しかし、ホテルなら商業地域の建坪率に該当するため1棟に65戸が可能。実際にこの施設では65室が販売予定になっている。 「要綱には『炊事設備の無い場合』はホテルとして建設が許可されるとあります。しかし、建築時にはキッチンを設けず、分譲後に各戸で付けてしまえばマンションと同じ。要綱をすり抜けられてしまうわけです」(同前)