マニア垂涎、幻の鳥「ドードー」のコレクションがオークションに。「卵の欠片が入った箱」など珍品も
ドードーはモーリシャス島に生息していたハト目の鳥で、大航海時代初期の1507年にポルトガル人によって発見された。空を飛べずよたよたと歩くドードーは人間の格好の標的になった上に、人間が持ち込んだイヌやブタに捕食されるなどして1681年に絶滅した。こうして幻の鳥となったドードーは今なお多くの人々の好奇心を掻き立てている。 1865年、自然史研究家で教師のジョージ・クラークは、鉄道に接する湿地帯で多数のドードーの骨を発見した。クラークは現在のおよそ1万5000ドル(約217万円)と引き換えに100本の骨を大英博物館のリチャード・オーウェンに送った。 だがクラークは、発見した骨の大部分を手元に残していた。
これらの骨は1920年代に、クラークの遺族から鳥類学者として有名だったヒュー・ウィスラーに託された。その後ウィスラーが死去し、当時10代だった彼の息子ラルフに骨は受け継がれた。彼は瞬く間にドードーに魅了され、専門家になっただけでなく、彫刻や絵画、装身具など、ドードーにまつわるあらゆるものを収集するようになった。そしてイギリスのイースト・サセックス州にある彼の家は「ドードーハウス」と呼ばれるまでになった。 ラルフは2023に死去し、彼のコレクションの一部が9月24日と25日、イギリス南東部のオークション会社、サマーズ・プレイス・オークションで売却されることが発表された。
トップロットはジョージ・クラークが発見したドードーの胸骨で、クラークの娘イーディスからの手紙が添えられている。予想落札価格は1万600~1万3200ドル(約153万円~191万円)。サマーズ・プレイス・オークションのルパート・ファン・デル・ヴェルフによれば、これはドードーコレクターの間では「スター級 」の品物であり、「誤解を恐れずに言えば、ドードーの歴史の鍵が市場に出る貴重な機会」だという。 それ以外の注目は、1800年代に発見された、脛骨に相当する鳥の脚の骨、脛骨足骨の2セットだろう。こちらの予想落札価格は5300~7900ドル(約76万円~114万円)。クラークが所有していた卵の欠片が入った箱も珍品だ。彼はドードーの卵だと信じていたが、その真偽は科学的には検証されていない。予想落札価格は270ドルから530ドル(約4万円~8万円)。ほか、ドードーをテーマとした最初の出版物、ストリックランドH.E.およびメルヴィルA.G著『ドードーとその仲間たち』(1848)や、さまざまなドードーの彫刻や絵画も出品されている。 ファン・デル・ヴェルフは、「ラルフ・ウィスラーが人生をかけて集めたドードー・コレクションの一部を販売できることを光栄に思います。購入者のドードー・コレクションのさらなる充実や、コレクションを始めるきっかけになることを願っています」と話している。
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