なぜ中国は東京五輪出場選手にワクチンを提供するのか…海外メディアは「国際的批判を受けている人権問題との関連性」を示唆
国際オリンピック委員会(IOC)のオンライン総会の2日目が11日、開催されトーマス・バッハ会長が、その冒頭で、中国オリンピック委員会から東京五輪と2022年2月の北京冬季五輪の出場選手らに新型コロナウイルスのワクチンを提供する申し出があったことを明らかにした。バッハ会長は、「親切な申し出があった。五輪の真の連帯精神に基づく申し出に感謝する。東京と北京への参加者がワクチンを利用できる。これらの追加接種分の費用はIOCが負担する」と説明した。ただ、東京五輪・パラリンピック組織委員会への事前の根回しはなく、同日に会見を開いた武藤敏郎事務総長は「ワクチン接種に関しては政府がやっている。これはIOCの話なので組織委員会としてコメントする立場にない」と困惑。国内でのワクチン接種が順調に進んでいない状況もあり、東京五輪への中国のワクチン問題は波紋を広げることになった。 なぜ中国は東京五輪へのワクチン提供を働きかけたのか。その狙いは何なのか。 海外メディアも、このニュースを伝えると同時に中国の狙いについての分析、見解を報じた。英BBCスポーツのアレックス・キャプスティック記者は、「中国は世界中で同国のワクチンを接種する国を増やそうとプッシュしてきた。この背景から五輪とパラリンピックの前に選手たちに免疫を与えようとする提案は、PR活動として見られるかもしれない」と、中国が、自国製造のワクチンを世界へ広めようと“営業”していることとの関連性を指摘した。 さらに「『ジェノサイド(民族大量虐殺)』と言及されてきた中国(政府)によるウイグル族に対する(迫害)行為から、来年の北京冬季五輪の政治的なボイコットを呼びかける声が高まっていることともリンクしている」との見解をも示した。中国のウイグル地区への人権侵害とも取れる弾圧政策が、国際問題に発展、米政府が「まだ北京冬季五輪への参加は決定しない」と表明するなど、ボイコットの可能性を示唆する動きにつながっている。中国は、その国際世論の流れに歯止めをかけようと、ワクチン提供という人道的な申し出を行ったのではないか、という分析だ。 「東京五輪中止が検討されている」と報道して話題を集めた英ロンドン・タイムズ、米のワシントンポスト紙、ニューヨークタイムズ紙も同様の見解を示した。