なぜ中国は東京五輪出場選手にワクチンを提供するのか…海外メディアは「国際的批判を受けている人権問題との関連性」を示唆
英ロンドン・タイムズ紙は「中国のウイグル自治区でのイスラム系マイノリティーに対する人権侵害問題で北京2022のボイコットが複数の国で呼びかけられ、IOCと中国政府に対する批判の声が強まる中での中国のこの動きは興味深い」と報じ、ワシントンポスト紙は、「人権侵害の批判の中で、中国が五輪アスリート全員にワクチンを用意」との見出しを取って、国際的な批判と今回のワクチン提供問題を結び付けて報道した。 ワシントンポスト紙は、「ワクチン提供の申し出は、新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒への人権侵害に関して中国とIOCに強い批判が向けられている中でもたらされた。米国政府は、中国のイスラム系マイノリティーへの抑圧が『ジェノサイド』を作り上げていると表明している。来年2月の北京五輪の開催地の変更を呼びかける政治家のリーダーも出てきており、人権団体のいくつかはボイコットを要求した」という現状を伝えた上で、「IOCは、2022年冬季五輪の招致国(中国)を批判しないよう気を付けており、この発表は、ある種、世界的な和解となるのかもしれない」との好意的な見方を記した。 実は、ニューヨークタイムズ紙も、「中国にとって、IOCとの合意は、来年の北京冬季五輪を前にこの国における人権の記録に関する世論の監視や批判が高まることを抑える手助けとなるかもしれない」と、今回の申し出を評価している。 「世界中から東京を訪れる数千人(の選手)が、東京への到着前にワクチン接種をどのように行えるか、新型コロナウイルスの死亡者が世界で増え続ける中で健康で若いエリートアスリートたちと、彼らのチームが(それぞれの国民への)順番に割り込まずにどのようにワクチン接種を受けられるか、といった東京五輪が抱えていた慎重に扱うべき問題をIOCが解決する助けとなるだろう」 だが、その一方で中国のワクチン提供の裏にあるIOCとの深い関連性についての指摘もした。ワクチンの数やIOCが負担する金額なども明らかにされていないが、「バッハ会長は、この(ワクチン接種の)プログラム、ワクチンの入手量や費用についての詳細を示さなかった。おそらくバッハ会長の下で中国との関係を強化してきたIOCにとっては大きな金額にはならないだろう」と予測。 「中国は2022年の冬季五輪開催地が決定した2015年に世論の反対で2立候補国が次々と撤退し難しい状況にあった五輪関係者を救うために立ち上がった。さらに最近は、中国企業が五輪運動と提携し、数百万ドルの支援に取り組むことで合意している」と、中国とIOCの“金”に関する深い結びつきを紹介している。 また全世界的にまだワクチン供給が満足に進んでいない状況の中で東京五輪出場のアスリートだけが優先的にワクチン接種を受けることに対する賛否もある。