年金15万円・75歳の母「子に迷惑をかけたくない」と老人ホーム入居、5年目の悲劇。娘への深夜の電話で「もう限界」と大号泣したワケ
理想の「老人ホーム」を見つけた70歳母、5年後のまさかの顛末
老人ホームは介護を必要とする人が入る施設。そういうイメージでしたが、広告を見る限り、介護を必要としない健康な人でも入ることができそう――いろいろ調べてみると、ひと口に老人ホームといっても様々な種類があり、なかには健康な人でないと入れないホームもあることを知りました。 ――老人ホームであれば、健康な今でも入居できるし、介護が必要になっても子どもたちに迷惑をかけないのではないか そう考え、老人ホームを探し始め、「ここっ!」という施設を見つけました。入居一時金は800万円、月額費用は18万円。月々の年金の受取額は15万円ほどだという岩崎さん。予算的にもぴったりだったといいます。立地は自宅から車で30分ほど。子どもや孫が訪れた際、宿泊できるゲストルームがあることもポイントでした。またホームでは基本的に要介護2まで対応。それ以上になった場合は、系列の施設や病院に転居・転院できるという点も、今後を考えると安心の材料だったといいます。 入居から5年。途中コロナ禍があり、家族とも会えない寂しい日々もありましたが、ホームのスタッフが全力でフォローしてくれたと岩崎さん。あの未曽有の危機を乗り越えられたのは、この老人ホームに入居したからというほど、ホームのスタッフには感謝の気持ちでいっぱいだといいます。 ところが、事態は急変。ある夜、長女の携帯電話に電話を掛けた岩崎さん。電話に出た長女は真夜中の電話にドキッとしたようで、「どうしたの、お母さん?」と心配したような雰囲気。一方、岩崎さんは長女の声を聞いて何かがプツンと切れたのか、とめどなく涙が出てきたといいます。言葉を発しようとしても、なかなか言葉になりません。このときは「なんでもないよ、ごめんね」といって電話を切ったといいます。 翌朝、昨夜の電話で心配になった長女が、岩崎さんが入居する老人ホームへ。長女はホームに着くなり唖然とした様子でした。以前、面会に来たときとは180度違う雰囲気で、長女いわく「廃墟かと思った」といいます。 実はホームは経営難に陥り、さらに待遇への不満から多くの職員が退職。岩崎さんが感謝を口にしていた職員も、みんな辞めてしまったといいます。そしてこの1ヵ月でサービスは著しく低下し、さらに清掃も行き届かず荒れ放題に。昨今の物価高などにより経営難に陥る介護施設が増加。また恒常的な人材不足も、業界の大きな課題となっています。 もうここにいるのは限界……そんな思いから、昨夜は電話をしてしまったのです。 ――なんでこんなになるまで我慢するのよ! 「子どもたちには心配をかけたくなかったから」という親心。しかし娘たちとして「家族なんだから頼ってほしい」というのが本音だったようです。長女はそのまま岩崎さんを連れ出し、そのまま老人ホームを退去。しばらくは自宅にも戻らず、長女の家で暮らすといいます。 [参考資料] 内閣府『令和6年版高齢社会白書』 株式会社ダスキン『「親のいま」に関する親子2世代の意識調査』